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介護離職をさせないための支援策!再就職の支援制度や助成金も解説

「従業員の親御さんの介護で、最近休みがちな人がいる」
「とうとう介護を理由に退職者が出てしまった」

人事・労務担当者や経営者の方にとって、上記の悩みは決して他人事ではありません。介護離職はもはや個人の問題ではなく、企業の持続的な成長を脅かす重大な経営リスクです。

本記事では、介護離職が企業に与える深刻な影響をデータと共に明らかにし、国が提供する支援制度や助成金を活用する方法をわかりやすく解説します。コストを抑えつつ、従業員が安心して働き続けられる職場環境を整えるための実践的なヒントをまとめました。

介護離職が企業に与える3つの深刻なダメージ

介護離職と聞いても、まだ自社には関係ないと感じてしまう方は少なくありません。しかし、厚生労働省の調査によると、年間約10万人が介護・看護を理由に離職しているのが現実です。

参考:厚生労働省「令和6年育児・介護休業法改正について 【介護関係を中心に】」

介護離職は、企業にとって単に従業員が1名欠けるという問題ではありません。放置すれば、じわじわと組織全体を蝕む、深刻なダメージにつながる可能性があります。

具体的には、以下の3つの大きなダメージが想定されます。

熟練した人材の流出による生産性低下

例えば、長年企業に貢献してきたベテラン社員が退職することは、大きな損失だといえます。専門的なスキルや知識、長年の経験から得た暗黙知と呼ばれるノウハウは、一朝一夕には代替できない貴重な経営資源です。

顧客との深い信頼関係を築いてきた社員が離職すれば、売上に直接的な影響が出ることも少なくありません。業務の進め方や過去の経緯を知る人がいなくなり、業務が停滞したり、サービス品質が低下したりするリスクも高まります。

採用・再教育にかかるコスト増大

一人の中途社員を採用し、現場で活躍できるようになるまでには、想像以上のコストがかかります。必要となるのは、求人広告の掲載費用や人材紹介企業への手数料といった直接的な費用のみに留まりません。

書類選考や面接に関わる社員の人件費、入社後の研修費用、新しい担当者が業務に慣れるまでの周囲のサポートなど、目に見えないコストも膨大です。したがって、介護離職を防ぐことは、不要なコストの発生を抑えるための有効な投資といえます。

残された従業員の負担増と士気低下

離職者が出ると、残された従業員で業務を分担せざるを得ません。一人ひとりの業務負担が増え、残業が常態化すれば、心身の疲労が蓄積していきます。

また、従業員に「この企業は万が一のときに助けてくれないかもしれない」といった不信感が広がると、職場の雰囲気は悪化し、従業員のエンゲージメントは著しく低下します。最悪の場合、優秀な人材から次々と辞めていく負の連鎖に陥りかねません。

介護離職をさせないための支援策

介護離職を防ぐためには、企業が主体的に行動を起こすことが不可欠です。単に国が定めた制度を用意するだけでなく、従業員が本当に安心して働ける環境を整えるための、きめ細やかな配慮が求められます。

具体的には、以下の5つの支援策を総合的に進めていくことが重要です。

仕事と介護の両立に役立つ情報を社員に提供する

多くの従業員は突然親の介護に直面したとき、何から手を付ければ良いのかわからず、混乱してしまうことが少なくありません。「企業の制度を知らなかった」「公的なサービスがあるなんて思いもしなかった」といった理由で、離職を選んでしまうケースも珍しくありません。

企業は、従業員が必要な情報にいつでもアクセスできるよう積極的に情報提供を行うべきです。例えば、以下のような方法が挙げられます。

  • 社内イントラネット上に、介護支援に関するポータルサイトを開設する
  • 介護休業制度や助成金についてまとめたハンドブックを作成・配布する
  • 40代〜50代の従業員を対象に、介護に関するセミナーや研修会を定期的に開催する

制度を気兼ねなく利用できる社内環境を作る

どれだけ立派な両立支援制度を就業規則に定めても、職場の雰囲気が「休みにくい」「迷惑をかけられない」といったものであれば、制度は形骸化してしまいます。制度を機能させるためには、気兼ねなく利用できる環境作りが重要です。

特に鍵を握るのが、管理職の理解です。部下から介護の相談を受けた際に、制度の説明だけでなく利用しやすいように業務分担の見直しや代替要員の確保などを検討し、具体的な対応ができるよう管理職向けの研修を実施しましょう。厚生労働省のガイドラインでは、管理職の研修受講は必須とされています。

参照:厚生労働省「企業による社員の仕事と介護の両立支援に向けた実務的な支援ツール」

研修では、制度の理解だけでなく、介護に関する知識や相談スキル、部下の状況を把握するためのコミュニケーションスキルなども含めることが望ましいです。また、経営トップが「仕事と介護の両立は企業全体で支える重要な課題だ」といったメッセージを繰り返し発信していくことも、社内の意識改革を促すうえで重要です。

メッセージの発信だけでなく、トップ自らが率先して制度を利用する姿勢を示すことも効果的といえます。社内報やイントラネットなどを活用し、両立支援に関する成功事例や社員の声を紹介していくことも制度利用を促進するうえで有効です。

社員のニーズに沿った支援策を実施する

介護の状況は、一人ひとり大きく異なります。画一的な制度だけでは、すべての従業員のニーズには応えられません。

大切なのは、従業員の声に耳を傾け、自社の実情に合った柔軟な支援策を考えることです。定期的なアンケート調査や、人事担当者との1on1面談などを通じて、現場の課題や要望を吸い上げる施策が効果的です。

調査結果をもとに、以下のような多様な働き方の選択肢を用意しましょう。

  • テレワーク制度
  • フレックスタイム制度
  • 時差出勤制度
  • 短時間勤務制度

支援が必要な社員同士が交流できる場を整える

介護の悩みはデリケートで、職場では話しにくいと感じる人も多いものです。しかし、同じ悩みを抱える者同士であれば、気持ちをわかち合い、有益な情報を交換できます。

企業が従業員同士のつながりを支援していくことも、有効な離職防止策となり得ます。例えば、コミュニティを設けたり、介護中の従業員が集まる座談会やランチ会を定期的に開催したりすることが有効です。

加えて、専門家を招いた相談会やセミナーを開催すると、より専門的な知識や具体的な解決策を提供できます。

孤独感を和らげ、「一人ではない」と感じられることが、大きな心の支えとなるのです。さらに、企業が積極的に支援姿勢を示すことで、従業員のエンゲージメント向上にもつながり、結果として生産性の向上も期待できます。

支援体制を継続的に整備・強化する

介護を取り巻く状況は、法改正や社会の変化によって常に変わっていきます。一度、支援体制を整えたら終わりではありません。

具体的には、以下の点に着目して改善を進めましょう。

法改正・制度改正への迅速な対応常に最新情報を収集し、社内制度への反映を迅速に行う
利用状況の分析と課題の特定制度の利用状況を定期的に分析し、利用が進まない原因や課題を特定する
従業員からの意見収集アンケートやヒアリングを通じて、従業員のニーズや改善要望を収集する
外部専門家との連携必要に応じて、社会保険労務士や介護専門家など、外部の専門家と連携する
成功事例の共有制度を活用して成果を上げた従業員の事例を共有し、他の従業員のモチベーションを高める
経営層の理解と協力介護支援制度の重要性を経営層に理解してもらい、必要な予算や人員を確保する

介護支援制度は、従業員の仕事と介護の両立を支援し、企業全体の生産性向上にも貢献します。継続的な改善を通じて、より効果的な制度へと進化させていきましょう。

介護離職に対する公的な支援制度・助成金

「従業員のために支援を充実させたいものの、コスト面での制約が大きい」といったケースは珍しくありません。実は、国は企業や従業員の負担を軽減するため、さまざまな支援制度を用意しています。

制度を活用すれば、コストを抑えながら効果的な両立支援策を導入することが可能です。本章では、人事・労務担当者が知っておくべき代表的な制度を紹介します。

なお、内容によっては対象外となる労働者もいます。詳細はその都度、厚生労働省や公的機関の案内をご確認ください。

参考:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」

介護休業制度

介護休業制度は、従業員が要介護状態にある家族(配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫など)の介護と両立しながら、就業を継続するための体制づくりを支援する休業制度です。本制度の概要は以下の通りです。

項目内容
対象者要介護状態の家族を介護する、日雇いを除くすべての従業員
期間対象家族1人につき、通算93日まで
取得方法3回まで分割して取得可能
経済的支援雇用保険から介護休業給付金(休業開始時賃金の67%)が支給される

介護休業の活用ポイントは、休業期間に従業員が直接介護に従事するのではなく、仕事と介護の両立に向けた体制づくりの準備期間とすることです。この期間に、行政や民間のサービス申請、地域包括支援センターやケアマネジャーへの相談などを行い、介護をしながら就業を継続するための支援を整えることができます。

制度を利用しても従業員が自ら介護に従事してしまうと、93日では不足を感じてしまいます。長期間にわたって会社を休むことで両立に限界を感じ、離職につながるリスクも否めません。あくまで就業継続のために休業期間を得る、という視点が大切です。

参考:厚生労働省「介護休業|介護休業制度特設サイト」

介護休暇制度

介護休業が比較的長期の休業を想定しているのに対し、介護休暇は短期的なケアニーズに応えるための制度です。通院の付き添いや、介護サービス事業者との打ち合わせなど、突発的な用事の際に役立ちます。

項目内容
対象者要介護状態の家族を介護する、日雇いを除くすべての従業員
取得日数年間5日まで(対象家族が2人以上の場合は年間10日まで)
取得単位1日または時間単位で取得可能
特徴法律上、有給か無給かは企業の判断に委ねられている

時間単位で取得できるようになったことで、従業員はより柔軟に仕事と介護の時間を調整できるようになりました。

参考:厚生労働省「介護休暇|介護休業制度特設サイト」

介護のための短時間勤務等の制度

働きながら介護を続けるためには、フルタイム勤務が難しい場合も少なくありません。法律では企業に対し、従業員が利用できる両立支援の措置を講じることを義務付けています。

企業は、以下の選択肢の中から少なくとも1つの制度を導入し、従業員が利用できるようにしなければなりません。

  • 短時間勤務制度
  • フレックスタイム制度
  • 時差出勤制度
  • 介護費用の助成措置

上記の制度は、介護休業とは別に対象家族1人につき利用開始から3年の間で2回以上利用できる必要があります。

参考:厚生労働省「短時間勤務等の措置|介護休業制度特設サイト」

介護のための所定外労働の制限(残業免除の制度)

介護をしている従業員にとって、定時に退社できるかどうかは極めて重要な問題です。本制度は、従業員が請求した場合、企業は原則として所定外労働、つまり残業をさせてはならないと定めています。

従業員は仕事終わりの時間を確実に介護に充てられるようになり、心身の負担を大きく軽減できます。企業としては、残業ありきの業務体制を見直す良いきっかけにもなるのです。

参考:厚生労働省「所定外労働の制限(残業免除)」

両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)

従業員の仕事と介護の両立支援に積極的に取り組む企業を、国が金銭面で支援する制度です。特に中小企業にとっては、導入のハードルを下げる心強い支援策となります。

介護離職防止支援コースは、企業の取り組み内容に応じて、主に以下の3つの区分に分けられます。

制度名主な要件助成額
介護休業介護休業を取得し、復職後も雇用が継続している40万円
介護両立支援制度制度を1つ導入し、従業員が利用した場合20万円
介護両立支援制度制度を2つ以上導入し、従業員がいずれかを利用した場合25万円
業務代替支援介護休業を取得した従業員の代替要員を新規採用または派遣で確保した場合20万円
業務代替支援介護休業者の代替要員へ手当を支給5万円
業務代替支援介護短時間勤務者の代替要員へ手当を支給3万円

助成金を活用すれば、企業は経済的な負担を抑えつつ、従業員のための手厚い支援体制を構築できます。

参考:厚生労働省「2.両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」

介護離職後の再就職を支援する公的な制度

介護を理由に離職してしまった場合でも、国は再就職に向けたセーフティネットを用意しています。人事担当者としては直接的な支援策ではありませんが、こうした制度があることも知っておくと、採用活動の幅が広がる可能性があります。

代表的な制度として、ハローワークが主体となって実施する「ハロートレーニング(公的職業訓練)」が挙げられます。希望する職種に就くために必要なスキルや知識を、原則として無料で習得できる制度です。

ハロートレーニングの受講者には、ハローワークや訓練実施機関が積極的に就職支援を行います。また、一定の要件を満たす人に、訓練受講中の生活を支援する雇用保険の各種手当や給付金などを支給しています。

企業側から見れば、ハロートレーニングの修了者は明確な目的意識を持ってスキルを習得した意欲の高い人材です。介護経験を通じて培われた人間性や課題解決能力も、大きな強みと捉えられます。

参考:厚生労働省「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)」

仕事と介護の両立を支援するチェンジウェーブグループの取り組み

国や自治体の制度だけでなく、民間の専門企業による支援サービスも充実してきています。その一つが、さまざまな企業に対して組織変革や人材育成の支援を行ってきた、私たちチェンジウェーブグループの取り組みです。

弊社は、長年にわたり人的資本経営やダイバーシティ&インクルージョンの推進をサポートしてきました。豊富な知見とノウハウを活かし、現代企業が直面する大きな課題である「仕事と介護の両立」に対する具体的なソリューションを提供しています。

代表的なソリューションの一つが、実態把握アセスメント・eラーニングプログラム「LCAT」です。

本プログラムは、企業が仕事と介護の両立を支援するうえで欠かせない「現状把握」と「従業員の知識向上」を同時に進められる仕組みです。参加者はセルフチェックによって自分の介護への備えや理解度を確認でき、企業側も組織に潜む介護リスクを把握できます。

さらに、年間を通じて必要な情報や学習コンテンツが継続的に配信されるため、従業員の知識定着を後押しします。結果として適切な介護体制の準備が進み、介護発生後の混乱を抑えつつ、円滑な職場復帰にもつながるよう設計された支援プログラムです。

介護離職について自社だけで対策を進めるのが難しいと感じる場合、まずはチェンジウェーブグループまでご相談ください。

まとめ:支援体制を整えて介護離職を防ごう

介護離職は、もはや一部の従業員の個人的な問題ではなく、企業の未来を左右する経営課題です。しかし、見方を変えれば大きなチャンスでもあります。

仕事と介護の両立支援に真摯に取り組むことは、単なる離職防止に留まりません。従業員のエンゲージメントを高め、生産性を向上させ、人を大切にする企業としての社会的評価を高めることにもつながります。

まずは自社の就業規則を改めて確認し、利用できる助成金がないか確認してみることをおすすめします。そして、従業員の声に耳を傾け、自社に合った支援の形を模索してみてください。

一つひとつの取り組みが、従業員と企業の未来を守る、確かな投資となるはずです。

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