女性管理職の登用、何から始める?企業の成長を加速させる戦略ガイド

企業の経営層や人事担当者として、「女性管理職の登用、具体的に何から始めれば良いのか」とお悩みではありませんか。また、「法改正で情報開示が義務化されると聞いたが、どのような対応が必要なのか」と、具体的な情報を探している方もいらっしゃるでしょう。
女性管理職の登用は、もはや単なる社会貢献活動ではありません。企業の持続的な成長を実現するための、不可欠な経営戦略となっています。
本記事では、女性管理職の登用に関する現状分析から、具体的な推進ステップまで、網羅的に解説します。単なる数合わせで終わらない、企業の未来を切り拓くための本質的な取り組みのヒントをぜひ参考にしてください。
なぜ今、女性管理職の登用が「経営戦略」なのか

「女性活躍推進」の言葉は社会に広く浸透したものの、本質的な重要性を自社の成長エンジンとして捉えられている企業は、まだ多くないのが実情です。
女性管理職の登用は、コンプライアンスや企業の社会的責任(CSR)といった側面だけでなく、企業の競争力を直接的に左右する重要な「経営戦略」です。これからの時代で持続的な成長を実現するためには、多様な人材の能力を最大限に引き出す経営が功を奏します。
本章では、客観的なデータと共に、女性管理職の登用が企業にもたらす具体的なメリットを詳しく解説します。
データで見る日本企業の現状|政府目標と国際比較
まず、日本企業が置かれている客観的な状況をデータで確認しましょう。帝国データバンクが2025年に発表した調査によると、国内企業の女性管理職比率は平均11.1%と過去最高を更新しました。
しかし、政府が掲げる「2030年までに30%」の目標を達成している企業は、わずか11.9%に留まっています。国際社会に目を向けると、遅れはさらに顕著です。
| 国名 | 女性管理職比率 |
|---|---|
| フィリピン | 50.5% |
| スウェーデン | 40.2% |
| アメリカ | 41.1% |
| 日本 | 11.1% |
参考:株式会社帝国データバンク「女性登用に対する企業の意識調査(2025年)」
以上のように、日本の女性管理職比率は、OECD加盟国の中でも最低レベルに位置しているのが現状です。企業文化や社会構造に根差した、より本質的な課題の存在を示唆しています。
企業価値を高める3大メリット
女性管理職を増やすことは、企業に具体的かつ多角的なメリットをもたらします。代表的なメリットは以下の3つです。
| メリット | 具体的な内容 |
|---|---|
| 多様性によるイノベーション創出と業績向上 | 異なるバックグラウンドを持つリーダーが議論に加わることで、市場の多角的なニーズを捉えたイノベーションが促進され、結果として変化の激しいビジネス環境における競争優位性の確立に寄与します。 |
| 優秀な人材の獲得・定着 | 女性がキャリアを継続しやすい環境は、優秀な人材を引きつけ、定着率を高めます。 若手女性社員にとって具体的なロールモデルとなり、キャリア形成を後押しします。 |
| ESG投資や社会からの評価向上 | ダイバーシティ経営は、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点からも重要視されます。 投資家や顧客からの信頼を獲得し、企業価値やブランドイメージの向上に直結します。 |
つまり、女性管理職の登用が単なるコストではなく、企業の未来を作るための重要な「投資」であることを示しています。
女性管理職の登用を阻む3つの構造的な壁

よく耳にする「女性は管理職になりたがらない」といった意見の問題の根源は、個人の意欲ではなく、企業組織に深く根付いた構造的な障壁にあります。
本章では、代表的な「3つの壁」について解説します。
- 根強い性別役割分担意識と長時間労働文化の共存
- 仕組みはあるのに活かされない職場文化
- 本人も気づかない「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」
1. 根強い性別役割分担意識と長時間労働文化の共存
職場に根強い性別役割分担意識と、長時間労働文化が共存していることがまず一つ目の壁です。
日本では依然として、長時間労働文化が根付いている一方で、社会的には「育児や介護は主に女性が担うもの」という性別役割分担の意識も根強く残っています。
2つの文化が共存する環境では、女性が仕事と家庭を両立しながら管理職を目指すことは極めて困難です。結果として、多くの女性がキャリアの途中で昇進を諦めるという難しい選択を迫られています。
2. 仕組みはあるのに活かされない職場文化
制度や仕組み自体は整備されているものの、その運用実態が女性管理職登用を阻んでいるケースも少なくありません。
介護においては、いまだに「制度を利用しづらい雰囲気」や「評価への影響を懸念して利用を控える」といった未利用の課題が根強く残っています。これに対し、育児においては多くの企業で制度利用が定着しているものの、短時間勤務制度などの支援策を恒常的に利用し続けることで、結果として成長機会を逸失してしまう点が課題です。
十分な事前の情報提供やキャリア形成の視点がないまま、本来は一時的な措置であるはずの制度を長く使い続けることで、難易度の高い業務や責任あるポジションから遠ざけられてしまい、管理職候補としての経験値が蓄積されにくい構造を生み出しています。また、管理職に至るまでの具体的なキャリアパスが示されていないため、制度を利用中の社員が将来の自分をイメージしにくいという課題もあります。
このような状況下で、数値目標の達成のみを目的として女性管理職を増やそうとすれば、本人と組織の双方に不幸な結果をもたらすリスクが高まります。職場文化の醸成には、単なる制度の提供に留まらず、制約がある中でもいかに成長機会を確保し、キャリアを継続させるかという視点が不可欠です。
3. 本人も気づかない「無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)」
評価や人材配置の場面で、私たち誰もが持つ「無意識の偏見」が公正な判断を妨げている可能性もあります。
例えば、管理職が「リーダーシップは男性の方が向いている」「重要なプロジェクトは男性に任せよう」と無意識に判断してしまうことです。
上記のような偏見は、女性から成長の機会を奪い、キャリアアップの道を閉ざしてしまいます。さらに、女性自身が「私には管理職なんて無理」と思い込んでしまう内面化されたバイアスも、大きな障壁となっています。
【2025年4月〜】法改正で必須に|女性活躍推進法の開示義務化とは

女性管理職の登用は、努力目標から法的義務へと移行しつつあります。2025年4月1日から、改正女性活躍推進法に基づき、情報公表の義務化対象が拡大されるため、人事担当者は正確な理解と迅速な対応が必要です。
これまでは、対象は常時雇用する労働者数が301人以上の企業でしたが、本改正により101人以上300人以下の企業にも新たに義務が課せられます。
具体的には、以下の2つの区分からそれぞれ1項目以上を選択し、公表する必要があります。
| 区分 | 公表が義務付けられる項目例 |
|---|---|
| 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供 | – 採用した労働者に占める女性労働者の割合 – 管理職に占める女性労働者の割合 – 男女別の採用における競争倍率 |
| 職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備 | – 男女の平均継続勤務年数の差異 – 10事業年度前および前後の事業年度に採用された労働者の男女別の継続雇用割合 – 男女別の育児休業取得率 |
参考:厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」
企業が取るべき対応は、以下の4ステップです。
- 自社の状況把握・課題分析:女性管理職比率や男女の勤続年数差などを正確に把握する
- 行動計画の策定・届出:課題解決のための目標と取り組み内容を盛り込んだ行動計画を作成し、労働局へ届け出る
- 社内周知・外部公表:策定した行動計画を社内に周知し、自社のWebサイトなどで外部に公表する
- 取り組みの実施・効果測定:行動計画に沿った取り組みを実行し、定期的に目標の達成状況を確認する
今回の法改正は、企業にとって女性活躍推進への取り組みを本格化させる大きなきっかけとなり得ます。
女性管理職の登用を実現する具体的ロードマップ

課題を認識し、法的な義務を理解した上で、次に取り組むべきは具体的なアクションです。しかし、何から手をつければ良いかわからないといった声も少なくありません。
本章では、女性管理職の登用を実現するための実践的なロードマップを4つのステップでご紹介します。
施策を体系的に、そして継続的に実行すれば、真の組織変革につながります。
Step1:経営トップのコミットメントと全社へのメッセージ発信
変革は、経営トップの強い意志から始まります。まず、経営者が女性活躍推進を重要な経営戦略であると明確に位置づけ、本気度を社内外に示すことが不可欠です。
- 具体的な数値目標の設定:「20XX年までに女性管理職比率を〇%にする」といった具体的な目標を掲げる
- 継続的なメッセージ発信:社内報や全体会議など、あらゆる機会を通じてトップの考えを繰り返し伝える
- 経営会議での議題化:女性活躍推進を経営マターとして定期的に議論し、進捗を確認する
トップの明確なコミットメントが、組織全体の意識を変え、変革を推進します。
Step2:柔軟な働き方の実現と、性別を問わない両立支援
次に、多様な人材が活躍するためには、多様な働き方を認め、支える制度と文化が必要です。特に仕事と家庭の両立支援は、性別を問わず、すべての従業員にとって重要な課題です。
- 多様な勤務制度の導入:テレワーク、フレックスタイム、短時間勤務制度などを拡充し、従業員がライフステージに合わせて働き方を選べるようにする
- 男性の育児休業取得の奨励:男性の育休取得を当たり前にする文化を醸成する。女性の負担軽減だけでなく、男性自身の意識改革にもつながる
- 心理的安全性の確保:制度の利用がキャリアにおいて不利にならない、誰もが安心して制度を使える職場風土を創り上げる
前述の通り、制度を整えるだけでは「使いづらい」「想像できないからやめておこう」などと、形骸化してしまうリスクがあります。何よりも、制度が当たり前に活用される文化の醸成が大切です。
Step3:計画的な育成プログラムとロールモデルの説明
続いて、計画的な育成プログラムとロールモデルについて説明します。
管理職を担える人材は、一朝一夕には育ちません。特に女性社員に対しては、意図的かつ計画的な以下のような育成機会の提供が重要です。
- 体系的な育成プログラムの実施:次世代のリーダー候補となる女性社員に対し、リーダーシップ研修やマネジメント研修などを計画的に実施する
- メンター制度の導入:経験豊富な先輩社員がメンターとなり、キャリアに関する悩みや課題について相談できる体制を整える
- ロールモデルとの交流機会創出:社内外で活躍する女性管理職を招いた講演会や座談会を開催し、キャリアパスを具体的にイメージできる機会を提供する
目標となる存在がいることは、キャリア形成における強力なモチベーションとなり、管理職への挑戦意欲を醸成するきっかけとなります。
Step4:公正・透明な評価制度へのアップデート
現状の評価制度を見直し、より公正で透明性のある制度へとアップデートすることで、女性管理職の登用に向けた基盤を整えましょう。
従業員の納得感を高め、モチベーションを引き出すためには、公正で透明性の高い人事評価制度が不可欠です。従来の年功序列や長時間労働を評価するような制度から脱却する必要があります。
具体的には、以下のような制度へとアップデートを行いましょう。
- 成果・能力主義への転換:成果や発揮した能力(コンピテンシー)に基づいた評価基準に見直す
- 評価者トレーニングの義務化:評価者が無意識の偏見に囚われず、客観的な評価ができるよう研修を徹底する
- 評価と報酬の連動:評価結果と報酬を明確に連動させ、性別による不合理な賃金格差を是正する
誰もが「正当に評価されている」と感じられる環境が、女性の昇進意欲を自然に引き出します。
女性管理職の登用を実現させた企業の事例

理論やステップを理解しても、自社でどのように実践すれば良いかイメージが湧きづらいものです。本章では、女性管理職の登用を実現させた企業の事例をご紹介します。
三井化学株式会社|無意識の思い込みを可視化し女性管理職登用の幅を広げた事例
三井化学株式会社では、組織に潜む無意識の思い込みを見える化し、管理職層への研修や育成の仕組み整備に取り組むことで、女性社員の登用候補が広がり、納得度の高い育成サイクルを実現しています。
三井化学では、具体的には以下のような取り組みを行っています。
- 部門ごとのバイアスをANGLE(※)で“見える化”:管理職に自分の思考のクセを客観的に理解してもらう取り組み
- 部門ごとのバイアス傾向をディスカッション:なぜ自部署で女性登用が進まないのか、取るべきアクションについて討議
- メンタリング制度、部門ごとのデータ共有、育成プログラム:登用までの道筋を一本化する仕掛けを整備
(※)ANGLEとは、チェンジウェーブグループが提供している受講者のアンコンシャス・バイアスを測定・数値化し可視化するためのeラーニングツールです。
上記の取り組みにより、控えめな性格の社員や時短勤務中の女性も、実績に基づいて公平に候補へ挙がるようになり、「なぜこの人が登用されるのか」が組織全体で共有されやすくなりました。
つまり、女性管理職を増やすには、制度より先に“無意識の前提”を整えることが欠かせません。三井化学の取り組みが示すように、見えない思い込みを扱えるようになった企業から、着実に変化が起きています。
本事例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
参考:D,E&I推進のための体系的な取り組み 〜「アンコンシャス・バイアス」をフックに〜 三井化学株式会社のデータ活用と施策立案事例
リコージャパン株式会社|人事と現場が連携して制度改革をした事例
リコージャパン株式会社では、人事と現場が密に連携しながら女性リーダー育成を進めたことで、メンバーの視野拡大や働き方改革につながる成果を上げています。
女性リーダーを着実に育てるには、人事だけでも現場だけでも不十分で、双方が同じ方向を向きながら育成機会や働き方をデザインする必要があるためです。特に若手女性が将来のキャリアを描くには、ロールモデルや実践機会、マネジメントの理解が欠かせず、分断されると育成が進みにくくなります。
リコージャパンでは、異業種研修「エイジョカレッジ(※)」に参加し、 「本質課題の特定」「組織視点の習得」「働き方改革の実証実験」といった取り組みを行いました。
※エイジョカレッジとは、チェンジウェーブグループが営業職の女性リーダー人材を対象に開催している変革体験型の異業種研修です。
結果として、次のような効果が生まれ、早期の育成機会が女性リーダーの成長を後押ししました。
- 営業職と上司が16時退社を実現し、残業22時間削減
- 売上比250%の成果
- メンバーの視野拡大、キャリア意識の変化
- 現場と本社が同じ方向性を持つ“横断的な関わり”が強化
つまり、女性リーダー登用を進める上での大きな壁は「人事と現場が分断したままで、育成施策が動かないこと」です。 リコージャパンのように、現場と人事が伴走し合う仕組みを構築することで、女性のキャリア形成は大きく加速していきます。
本事例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
参考:現場が人事部門に求める女性活躍支援策 リコージャパン様 事例紹介
女性管理職の登用を加速させるチェンジウェーブグループの支援

自社だけで女性管理職の登用を進めるには、多くの困難が伴います。特に、組織に深く根付いた「文化」や「無意識の偏見」といった課題は、内部の力だけでは変革が難しい場合が少なくありません。
チェンジウェーブグループは、500社以上の大手企業の組織変革を支援してきた実績があります。以下のソリューションを通じて、企業の課題解決を強力に後押しします。
- eラーニングツール「ANGLE」:心理学研究に基づき、従業員一人ひとりの無意識の偏見を「見える化」し、具体的な行動変容を促す
- ビジネスケアラー支援プログラム「LCAT」:女性がキャリアを中断する大きな要因である「仕事と介護の両立」問題に対し、具体的な支援策を提供。介護離職を防ぎ、人的資本の損失を食い止める
- 一気通貫のコンサルティング:課題分析から研修プログラムの設計・実行、制度構築まで、企業の状況に合わせた最適な変革プランを一貫してサポート
専門家の支援も活用し、真のダイバーシティ経営を実現する

本記事では、女性管理職の登用について、現状から課題、そして具体的な解決策までを網羅的に解説しました。女性管理職の登用は、企業の持続的な成長と競争力強化に直結する、避けては通れない重要な経営課題です。
ご紹介したロードマップに基づき、多角的な施策を粘り強く実行していくことが求められます。しかし、中でも「全社的な意識改革」は、一朝一夕には成し遂げられない困難な課題です。
自社だけでの解決が難しいと感じた場合は、チェンジウェーブグループへぜひご相談ください。
といった、組織変革を実現するための各種サービスをご用意しております。
真のダイバーシティ経営を実現し、企業の新たな成長ステージへの扉を開きましょう。