【事例あり】無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)をなくすには|個人と組織の実践ガイド

「もしかして、自分の判断も無意識の偏見だったのかも」
「職場での不公平感をなくすには、どうすれば良いかわからない」
上記のように、自分や周囲の言動に潜む無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に気づき、なくしたいと考えている方も多いのではないでしょうか。
無意識の偏見は、悪意がなくても、採用や評価の不公平、職場の心理的安全性の低下、イノベーションの阻害など、深刻な問題を引き起こします。
本記事では、無意識の偏見が生まれるメカニズムから、職場に与える具体的な悪影響、そして個人と組織が今日から実践できる具体的な対策までを徹底解説します。
そもそも無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)とは

無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)とは、自分では気づいていない、物事の見方や捉え方の偏りのことです。特定の個人が持つ悪意や差別意識とは異なり、脳の仕組み上、誰にでも起こりうる現象です。
したがって、「自分には偏見はない」と思っていても、無意識のうちに特定の判断を下している可能性があります。
脳のショートカット機能が原因
無意識の偏見が起きるのは、脳のショートカット機能が原因です。私たちの脳は、1秒間に約1,100万もの情報を受け取ると言われています。
膨大な情報をすべて意識的に処理するのは不可能なため、脳は過去の経験や知識、文化などをもとに情報を自動的に処理する、ショートカット機能を持っています。ヒューリスティクスとも呼ばれ、迅速な意思決定を助ける重要な機能です。
しかし、省エネ機能であるヒューリスティックが、性別、年齢、国籍、学歴といった特定の属性に対する固定観念や先入観を無自覚に作り出し、非合理的な判断につながってしまうのです。
職場でよくある7つのバイアス事例
無意識の偏見は、職場におけるさまざまな場面で現れます。特に代表的な7つのバイアスと具体例を、以下の表でご紹介します。
ご自身の経験と照らし合わせてみてください。
| バイアスの種類 | 定義 | 職場での具体例 |
|---|---|---|
| ステレオタイプ・バイアス | 特定の集団への固定観念で個人を判断する傾向 | 「女性はサポート業務が得意」「理系出身者は論理的だが、コミュニケーションは苦手だ」と決めつける |
| 確証バイアス | 自分の仮説を支持する情報ばかりを集め、反する情報を無視する傾向 | 「彼はきっとやる気がない」と思い込み、証拠となる行動ばかりを探し、成果を上げている事実を軽視する |
| ハロー効果 | 一つの目立った特徴によって、全体の評価が歪められる傾向 | 「有名大学の出身だから、仕事も優秀に違いない」と、実際の能力以上に高く評価してしまう |
| 正常性バイアス | 危機的な状況を「きっと大丈夫」「自分には関係ない」と過小評価する傾向 | 職場でハラスメントの相談を受けても、「うちの部署ではありえない」と軽視し、適切な対応を怠る |
| 集団同調性バイアス | 多数派の意見や行動に流され、自分の意見を主張しない傾向 | 会議で反対意見があっても、「場の空気を壊したくない」と考え、多数派の意見に賛成してしまう |
| 権威バイアス | 地位や肩書きのある人の意見を無条件に正しいと信じ込む傾向 | 「部長がおっしゃることだから間違いない」と、提案内容を十分に検討せずに受け入れてしまう |
| ルッキズム(外見至上主義) | 外見に基づいて人物の能力や価値を判断する傾向 | 採用面接において、能力とは関係なく、容姿の良い候補者を無意識に高く評価してしまう |
放置は危険|無意識の偏見が職場にもたらす5つの深刻な悪影響

無意識の偏見は、単なる個人の思い込みでは済みません。放置すれば、従業員個人のキャリアから組織全体の成長まで、多岐にわたる深刻な悪影響を及ぼす経営リスクとなり得ます。
本章では、無意識の偏見がもたらす影響を”個人”と”組織”の2つの側面から解説します。
【個人への影響】不公平な評価と成長機会の損失
無意識の偏見による個人への影響としては、不公平な評価と成長機会の損失につながる点が挙げられます。採用や人事評価の場面で、個人の能力や実績に対する正当な評価を妨げられてしまうためです。
例えば、上司が無意識に持つ「女性はリーダーに向かない」といった偏見が、優秀な女性社員の昇進機会を奪ってしまうケースが一例です。また、「育児中の社員に重要な仕事は任せられない」といった思い込みが、本人の意欲とは無関係に業務配分に影響し、成長の機会を損失させます。
上記のような不公平な扱いは、従業員のモチベーションやエンゲージメントを著しく低下させ、最終的には優秀な人材の離職につながります 。
【組織への影響】イノベーションの停滞と社会的信用の失墜
無意識の偏見による組織への影響には、イノベーションの停滞や社会的信用の失墜が挙げられます。組織内で無意識の偏見が心理的安全性を脅かし、自由な意見交換を阻害してしまうためです。
少数派の意見が軽視されたり、異論を唱えにくい空気が生まれたりすると、多様な視点が失われ、組織の創造性や問題解決能力は低下します。
結果として、新しいアイデアやイノベーションが生まれにくくなり、企業の競争力は停滞します。
さらに、偏った判断に基づくハラスメントや不公平な処遇がコンプライアンス違反とみなされれば、法的責任を問われるだけでなく、企業の社会的信用を失墜させる重大な事態に発展するケースもあります。
【個人編】無意識の偏見をなくすために、今日からできる3ステップ

無意識の偏見を完全になくすことは脳の仕組み上難しいものの、無意識の偏見の存在に気づき、意識的にコントロールを行えます。本章では、個人が今日から実践できる3つのステップを紹介します。
- ステップ1:自分の思い込みに気づく習慣をつける
- ステップ2:多様な視点を取り入れ、決めつけない
- ステップ3:無意識の偏見を防ぐ行動ルールを作る
以降で詳しく解説します。
ステップ1:自分の思い込みに気づく習慣をつける
最初のステップは、自分自身の偏見に気づく習慣をつけることです。日々の思考や言動の中で、「〜べきだ」「普通は〜」といった決めつけの言葉を使っていないか、意識を向けてみましょう。
なぜそう思ったのか、根拠は何かを自問自答する習慣が、無意識の思考パターンを可視化する第一歩です。
ステップ2:多様な視点を取り入れ、決めつけない
次に、自分の考えが偏らないように、意識して多様な視点を取り入れます。自分とは異なる意見や価値観を持つ人の話に積極的に耳を傾け、背景にある経験や考え方を理解しようと努めましょう。
情報を得るときも、一つのソースだけでなく、複数の異なる立場からの情報を確認する癖をつけることで、多角的な視点が養われます。
物事を決めつける前に、「本当にそうなのか」「他の見方はないか」と一度立ち止まって考えることが、偏った判断を防ぎます。
ステップ3:無意識の偏見を防ぐ行動ルールを作る
次に、無意識の偏見を防ぐ行動ルールを作ります。
意識を変えることは難しくても、行動を変えることは可能です。特に無意識の偏見の影響を受けやすい場面で、以下のような特定の「行動ルール」を設けることが効果的です。
- 人の評価をするときは、印象だけでなく、具体的な事実やデータに基づいて判断する
- 会議で意見を述べるときは、結論を急がず、まず全員の意見を聞くプロセスを設ける
以上のように、判断のプロセスに「思考のワンクッション」を置くルールを作ることで、直感的な偏見に流されるのを防ぎます。
【組織編】職場で無意識の偏見を無くすための3つの戦略的アプローチ

個人の努力だけでは、組織に根付いた無意識の偏見をなくすことは困難です。経営層や人事担当者が主導し、組織全体で取り組むための3つの戦略的アプローチを紹介します。
無意識の偏見をなくし公平な職場環境を作るには、仕組みを作ることが重要です。
具体的には以下の戦略があります。
- 戦略1:全階層で「アンコンシャス・バイアス研修」を継続的に実施する
- 戦略2:採用・評価・配置の「人事プロセス」からバイアスを排除する
- 戦略3:フォローアップのための仕組みづくりを行う
以降で詳しく解説します。
戦略1:全階層でアンコンシャス・バイアス研修を継続的に実施する
まず、全階層に向けたアンコンシャス・バイアス研修の継続的な実施を行う戦略があります。従業員一人ひとりが無意識の偏見について正しく理解し、自分ごととして捉えるための研修が不可欠です。
研修は、経営層から一般社員まで、全階層を対象に実施します。
内容としては、バイアスの種類やメカニズムを学ぶ座学だけでなく、具体的な事例を用いたディスカッションやロールプレイングを取り入れ、実践的なスキルを養うことが重要です。
一度きりのイベントで終わらせず、定期的なフォローアップ研修やeラーニングを組み合わせ、継続的に意識を喚起する仕組みを作りましょう。
チェンジウェーブグループが提供する”ANGLE”では、無意識の偏見を定量データにて数値化が可能です。
自覚しにくいアンコンシャス・バイアスを「自分ごと」として認識し、行動変化につなげられます。
戦略2:採用・評価・配置の人事プロセスからバイアスを排除する
人事プロセスからバイアスを排除するのも戦略の一つです。人の意識に頼るだけでなく、人事制度などの「仕組み」で公平性の担保が極めて重要です。
採用、評価、配置といった各プロセスに潜むバイアスの影響を最小化するための具体的な手法を導入しましょう。
| 具体的な対策手法 | 目的と効果 |
|---|---|
| 構造化面接の導入 | 評価項目や質問を事前に標準化し、面接官の主観を排除。候補者を公平な基準で評価する |
| ブラインド採用の検討 | 履歴書から氏名・性別・年齢などの属性情報を隠し、スキルと経験のみで初期選考を行う |
| 客観的データに基づく評価 | 定量的な目標達成度や行動事実を重視し、評価基準を明確化する。印象による評価を防ぐ |
| 能力・意欲に基づく機会提供 | 個人のスキルやキャリア志向をデータ化し、性別や年齢で決めつけずに機会を平等に提供する |
戦略3:フォローアップのための仕組みづくりを行う
また、フォローアップのための仕組みづくりを行うことも戦略として挙げられます。アンコンシャス・バイアスへの対策には、一度研修や制度改定を行って終わりではなく、効果を測定し、改善を続けるPDCAサイクルを回す仕組みが不可欠です。
具体的には、定期的な従業員への調査を実施し、心理的安全性の度合いや公平感に関する意識の変化を定点観測します。
また、女性管理職比率や多様なバックグラウンドを持つ社員の定着率といったDEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)関連の指標を目標として設定し、進捗を追跡する必要があります。
チェンジウェーブグループの「ANGLE」を活用して無意識の偏見をなくすための取り組みを行っている事例

理論だけでなく、具体的なツールを活用して組織的な対策を進める企業も増えています。チェンジウェーブグループが提供する”ANGLE”は、個人のアンコンシャス・バイアスを測定・可視化し、行動変容を促すためのeラーニングプログラムです。
本章では、実際に”ANGLE”を活用している企業の事例を紹介します。
シスメックス株式会社様:ジェンダーバイアスを低減化し、世代間のバイアスの解消にも取り組んでいる事例
シスメックス株式会社様では、早くからダイバーシティ推進に取り組んできましたが、人材の多様化が進む中で次のような課題を感じていました。
- 外国籍人材、女性、シニアなど多様な人材が増え、価値観の違いによる摩擦が生じていた
- 年齢や性別に対する固定観念が残り、制度があっても行動変容につながりにくかった
- 日本型のメンバーシップ雇用に根付いたアンコンシャス・バイアスが、女性やシニアのキャリア形成を妨げていた
こうしたバイアスを前提とした組織風土を変えることが、ダイバーシティ推進の大きな課題となっていました。
課題解決のため、同社はアンコンシャス・バイアスを診断・可視化できる”ANGLE”を導入しました。活用のポイントは次の通りです。
- 直感的な回答を求める設計により、無意識のバイアスをそのまま可視化
- 診断結果を即時に確認でき、自身の思考の癖に気づける仕組み
- 管理職向け・一般社員向けのコースを用意し、全社員を対象に受講を実施
個人の意識改革にとどまらず、組織全体で共通認識を持つことを狙いとした活用が行われました。ANGLE導入後、ダイバーシティ推進に関して以下のような成果が見られました。
- 全体的にジェンダーバイアスが低下し、取り組みの効果が確認できた
- 部門や年代ごとのバイアスの傾向が明確になり、次の課題が可視化された
- 「誰にでもバイアスがある」といった認識が広がり、世代間の相互理解が進んだ
今後は、年齢差の大きい組織構成が進む中でも、アンコンシャス・バイアスへの継続的な気づきを通じて、より良い組織づくりにつなげていく方針です。
本事例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
シスメックス株式会社様 ダイバーシティ推進企業事例 | アンコンシャス・バイアスeラーニング導入事例
株式会社山口フィナンシャルグループ様:管理職層の「ANGLE」受講、ワークショップや取り組みでメディアにも取り上げられた事例
山口フィナンシャルグループ様では、地域の豊かな未来を共創する目的の実現に向け、人財育成とD&I推進を強化していました。一方で、組織文化や人材配置に関して次のような課題がありました。
- 男性中心の組織文化が長く続き、女性活躍が進みにくい土壌があった
- 事業の多角化により、正解のない提案や創造性が求められる場面が増加していた
- 管理職層に50代男性が集中しており、将来的な管理職不足が懸念されていた
- 配属や育成の場面で、性別による無意識の役割分担が起きている可能性があった
上記の課題を背景に、D&I実現の第一歩として女性活躍推進と組織文化変革に取り組む必要がありました。
同社では、経営層・管理職層、女性社員など対象層ごとに施策を組み合わせ、相乗効果を狙った取り組みを行いました。
経営層・管理職層向け
- グループ経営者会議でダイバーシティ推進の必要性をレクチャー
- eラーニング”ANGLE”とワークショップによるアンコンシャス・バイアス研修を実施
- 多様な人材を育成・マネジメントするため、自身のバイアス認識を促進
女性社員・次世代層向け
- 女性管理職向けの社内ネットワーク「なでしこ塾」を設置
- 非管理職女性向けにエンパワメント施策”YMFG Women’s Day”を実施
- 一般社員向けにジョブトライアルを導入し、経験機会を拡大
- 管理職手前の女性リーダー層にはリーダーシップ研修を実施
アンコンシャス・バイアスを”否定するものではなく、理解し行動に活かすもの”と位置づけた点も特徴です。
上記の取り組みにより、組織や個人に次のような変化が見られました。
- 管理職層のコミュニケーションに変化が生まれ、対話の中でバイアスを意識する発言が増加
- 研修内容を自発的に共有する管理職が現れるなど、学びの波及が起きた
- 日常の風景や会議構成に疑問を持つなど、組織を見る視点が変化
- 女性社員のキャリア・アップに対する意欲が顕在化・向上
今後は、アンコンシャス・バイアス研修や女性向け施策を継続しながら、個人の意識変革と組織風土の変化を両輪で進め、より実効性の高いD&I推進を目指しています。
本事例について詳しく知りたい方は、以下の記事をご確認ください。
まとめ|無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)をなくすためにはバイアスの自覚が重要

無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)は、悪意の有無にかかわらず、誰の心の中にも存在するものです。脳の仕組み上、無意識の偏見を完全になくすことはできません。
しかし、存在を認め、自分自身の偏りに気づき、影響を意識的にコントロールするのは誰にでも可能です。
個人レベルでは、常に自問する習慣を持つことが大切です。組織レベルでは、個人の努力だけに頼らず、研修や人事制度といった仕組みで公平な環境を整えることが欠かせません。
個人・組織の両輪で継続的に取り組むことが、誰もが能力を最大限に発揮できる、心理的に安全で公正な職場実現のカギです。
自社だけでの解決が難しいと感じた場合は、チェンジウェーブグループへぜひご相談ください。
といった、組織変革を実現するための各種サービスをご用意しております。