管理職不足に陥りやすい4つの原因とは|解決のための戦略まで徹底解説

「次世代のリーダーが育たない」
「やっと見つけた候補者に、管理職への昇進を断られてしまった」
「無理に昇進させた結果、適応に苦慮し、メンタルヘルスを損なうリスクを抱える社員がいる」
上記のような悩みを抱え、強い危機感を覚えている企業担当者は少なくありません。管理職不足はもはや個人の意識の問題ではなく、企業の持続的成長を揺るがす構造的な課題です。
本記事では、管理職が不足する根本的な原因を多角的に分析し、明日から自社で実践できる具体的な解決策までを網羅的に解説します。対症療法ではない、組織の未来を作るための戦略的アプローチを検討していきましょう。
7割の企業が実感|データで見る管理職不足の深刻な現状

管理職不足は、多くの企業が直面している課題です。帝国データバンクの調査によると、実に企業の約7割がリーダー人材の不足を実感しています。
参考:株式会社帝国データバンク「リーダー人材不足に関する企業の意識調査」
管理職不足の問題は”量的不足”と”質的不足”の2つの側面から捉える必要があります。どちらか一方、あるいは両方が複雑に絡み合い、多くの企業で組織運営のボトルネックとなっています。
量的不足
まず深刻なのは、管理職のなり手が減少している現状です。日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)の調査では、一般社員の約8割が「管理職になりたくない」と回答しています。
こうした傾向は特に若手・中堅層で顕著であり、昇進をキャリアアップとして前向きに捉える価値観が揺らいでいます。背景には、少子化による労働力人口の減少に加え、キャリア観の多様化があります。
終身雇用が当たり前ではなくなった今、一つの会社で管理職を目指す以外の選択肢が豊富になりました。結果として、多くの社員が管理職の道を選ばなくなっているのです。
参考:株式会社日本能率協会マネジメントセンター「管理職の実態に関するアンケート調査」
質的不足
一方で、ポストは埋まっているものの、管理職が役割を十分に果たせていない”質的不足”も大きな問題です。プレイヤーとしては優秀だった社員を昇進させたが、マネジメントで苦労しているケースがあります。
これは個人の資質の問題だけでなく、育成システムの構造的な課題に起因することが多いのが実情です。プレイヤーに求められるスキルと、マネージャーに求められるスキルは根本的に異なります。
両者のスキルの違いを理解し、適切な育成機会を提供できていないことが、管理職の能力不足を招いているのです。
【原因分析】なぜ管理職は敬遠されるのか|社員の”本音”から探る4つの構造的問題

管理職が不人気となった背景には、単なる「負担が大きそう」といったイメージだけでは説明しきれない、根深い構造的問題があります。本章では、社員が管理職を敬遠する”本音”を紐解き、4つの根本原因を解説します。
- 原因1:責任>権限・報酬のアンバランスと業務過多
- 原因2:ロールモデルの不在とキャリアパスの魅力低下
- 原因3:育成システムの形骸化と”いきなり管理職”問題
- 原因4:心理的安全性の欠如と失敗を恐れる風土
自社の状況と照らし合わせながら、課題の特定にお役立てください。
原因1:責任>権限・報酬のアンバランスと業務過多
管理職が敬遠される主要な理由の1つは、貢献に対する対価や権限のバランスが欠如していることです。責任だけが格段に重くなる一方で、見合うだけの権限や報酬が与えられていないケースが多く見られます。
特に日本の管理職は、本来のマネジメント業務に加えてプレイヤー業務との兼任が常態化しています。部下の育成や評価、チームの目標管理といった本来の役割に時間を割けず、目の前の業務に追われる日々が続いています。
過重な負担が、管理職の魅力を著しく低下させているのです。
原因2:ロールモデルの不在とキャリアパスの魅力低下
若手・中堅社員が将来のキャリアを考える際、身近な上司の姿は大きな影響を与えます。しかし、私たちチェンジウェーブグループの調査では「若手社員の8割以上が、目指したいと思う上司がいない」との衝撃的な結果が出ました。
参考:チェンジウェーブグループ「管理職に関する意識調査2025」
理由として、以下のような働き方が挙げられています。
- 毎日遅くまで残業している
- 無駄に思える業務が改善されておらず、生産性が低い
- 自己啓発や戦略を考える時間が取れていない
- プライベートを犠牲にしている
このような働き方が常態化しているのであれば「自分も管理職になりたい」と思う若手は減ってしまいます。
原因3:育成システムの形骸化と”いきなり管理職”問題
多くの企業において、管理職任用後の育成プログラムが十分に機能していません。初任者研修は存在しても、激しい環境変化の中で「多様な部下をマネジメントする」ことについては、十分な準備ができないまま、ある意味”いきなり管理職”になってしまいます。
マネジメントのアップデートがされないまま現場に立つ管理職は、以下のような課題に直面します。
- 部下に厳しいフィードバックができない
- メンバーのモチベーションを引き出せない
- 元同僚との関係性に悩む
- 相談できる相手がおらず孤立する
こうした状況では、本人が能力を発揮できないだけでなく、チーム全体のパフォーマンスも低下します。
原因4:心理的安全性の欠如と失敗を恐れる風土
管理職の立場は、常に成果を求められ、重要な意思決定を迫られます。挑戦や試行錯誤が許容されない組織風土では、一度の失敗がキャリアに大きく響きます。
そのため、誰もリスクを取って管理職になりたいとは思いません。
心理的安全性が低い組織では、社員は現状維持を好む傾向が強いです。
つまり、管理職が安心して試行錯誤できる環境や、失敗から学び再挑戦できる文化の醸成が、管理職への挑戦意欲を引き出す上で不可欠なのです。
管理職不足がもたらす経営リスク|放置が招く組織崩壊のシナリオ

管理職不足は、単なる現場の人員配置の問題ではありません。放置すれば、組織の根幹を揺るがし、最終的には企業の競争力を奪う深刻な経営リスクに直結します。
本章では、管理職不足が引き起こす具体的なリスクを解説します。
- リスク1:業績悪化とイノベーションの停滞
- リスク2:従業員エンゲージメントの低下と離職率の悪化
- リスク3:次世代リーダーの枯渇と組織の硬直化
リスク1:業績悪化とイノベーションの停滞
管理職は、経営層の方針を現場に伝え、戦略を実行に移す”組織の要”です。機能不全に陥れば、組織全体のパフォーマンスは著しく低下し、以下のような問題が発生します。
- 意思決定のスピードが遅れる
- 部門間の連携が滞り、セクショナリズムが蔓延する
- 現場からの改善提案や新しいアイデアが吸い上げられない
リスク2:従業員エンゲージメントの低下と離職率の悪化
部下にとって、身近な会社の代表者は直属の上司です。上司からの適切な指導やフィードバック、キャリア支援が受けられなければ、社員の仕事への熱意(エンゲージメント)は低下します。
Gallup社の調査によると、日本の従業員エンゲージメントは世界最低水準にあり、大きな要因が管理職のマネジメント不足にあると指摘されています。
参考:ギャラップ・ジャパン「変革への挑戦:日本の職場の新しい姿」
エンゲージメントの低い社員は、高いパフォーマンスを発揮できません。そして、成長機会がないと感じた優秀な人材から、より良い環境を求めて会社を去っていきます。
リスク3:次世代リーダーの枯渇と組織の硬直化
管理職不足がもたらす深刻なリスクは、将来の経営を担う人材が育たなくなることです。目先の業務に追われる管理職には、腰を据えて後継者を育成する時間も気力もありません。
5年後、10年後を見据えたときに、組織を牽引できるリーダー候補が誰もいない事態に陥ります。リーダーが育たない組織は、新陳代謝が止まり、変化に対応できなくなります。
すると過去の成功体験に固執し、新しい挑戦を避けるようになり、組織全体が硬直化してしまうのです。
【5つの戦略】「なりたい」と思わせる管理職と組織を作るための具体的アクションプラン

管理職不足の根深い問題を解決するには、小手先の対策では不十分です。管理職のポストをどう埋めるかではなく、社員が自らなりたいと思える魅力的な管理職と組織をどう作るか、発想の転換が求められます。
本章では、管理職不足を解消するための具体的な5つの戦略的アクションプランを提案します。
- 戦略1:管理職の役割を再定義し、魅力を取り戻す
- 戦略2:次世代リーダーを計画的に発掘・育成する
- 戦略3:現役管理職を孤立させず支えるサポート体制を築く
- 戦略4:外部からの採用・登用の考え方を変える
- 戦略5:経営層が主導する全社的な組織風土改革
戦略1:管理職の役割を再定義し、魅力を取り戻す
まず着手すべきは、管理職の仕事そのものの見直しです。管理職がプレイヤー業務に追われる現状を打破する必要があります。
AIやRPAなどのデジタルツールを活用し、報告書作成やデータ入力といった定型業務を徹底的に自動化・効率化しましょう。そして、部下が遂行可能な業務は積極的に権限委譲し、管理職が本来注力すべき戦略立案や人材育成に集中できる環境を整えます。
同時に、短期的な業績だけでなく「部下をどれだけ成長させたか」「チームのエンゲージメントをどれだけ高めたか」といったマネジメントの貢献度を正当に評価する仕組みの導入が重要です。
戦略2:次世代リーダーを計画的に発掘・育成する
計画的な視点でのリーダー育成が不可欠です。将来のリーダー候補を若手・中堅のうちから見出し、早期に育成を開始します。管理職任用要件を見直し、新しいリーダー像を描く企業も増えてきています。
育成面では、リーダーシップ研修や問題解決演習、他部署での経験を積ませるジョブローテーションなどを組み合わせた、体系的なプログラムを設計しましょう。
また、本人に「会社から何を期待されているのか」を明確に伝えることが、成長への意欲を引き出します。
さらに、管理職に求められるスキルを具体的に定義したスキルマップを作成します。上司と本人が1on1ミーティングの場で定期的にスキルマップを確認し、強みや課題を共有します。
次のステップとして何を学ぶべきかを共に考え、具体的なアクションプランに落とし込むことで、育成のPDCAサイクルを回していきます。
研修だけでなく、実践を通じた学びの場を提供します。経験豊富な上位管理職が相談役となるメンター制度は、候補者の不安を和らげ、視野を広げる助けになります。
また、同じ階層の候補者同士が悩みや成功体験を共有し合う”ピアラーニング(横の学び)”の場を設けることも、互いに刺激し合い、共に成長する文化を醸成する上で効果的です。
戦略3:現役管理職を孤立させず支えるサポート体制を築く
新たに管理職になった人材が、能力を発揮できずに潰れてしまう事態を防がなければなりません。就任直後、または2~3年経過した管理職をサポートする体制を取るのも一案です。
サポート期間を位置づけ、必要な知識やスキルをインプットします。人事部や先輩管理職が定期的に面談を行い、悩みを早期に発見し、解決を支援する仕組みを構築しましょう。
現代の若手社員は、一方的な指示命令では動きません。彼らの主体性を引き出し、成長を後押しする支援型マネジメントや、インクルーシブ・リーダーシップの発揮が求められます。
管理職に対するインクルーシブ・リーダーシップ研修の実施が、組織全体のコミュニケーションを活性化させ、エンゲージメントを高めることも多くあります。
戦略4:外部からの採用・登用の考え方を変える
社内育成と並行して、外部からの人材登用も戦略的に活用します。採用のミスマッチを防ぐため、まず自社の求めるリーダー像を明確に定義します。
過去の実績だけでなく、変化への適応力、学習意欲、部下育成に対する考え方などを評価基準に加えましょう。面接では「困難だった部下指導の経験は?」といった具体的な質問を通じて、当人のリーダーシップスタイルを見極めます。
しかし優秀な人材を採用できても、組織文化に馴染めずに早期離職してしまっては意味がありません。入社後のオンボーディングを徹底し、経営層や他部門のキーパーソンとの関係構築を意図的に支援します。
また、社内に存在する暗黙のルールや独自の文化を言語化して伝えることも、外部人材がスムーズに組織に溶け込み、早期にパフォーマンスを発揮するために不可欠です。
戦略5:経営層が主導する全社的な組織風土改革
管理職不足の問題は、最終的には組織全体の文化に行き着きます。制度や仕組みを導入しても、経営トップの本気度が伝わらなければ変革は進みません。
「なぜ今、管理職のあり方を変える必要があるのか」「会社としてどのようなリーダーを求めているのか」を、経営層が自らの言葉で繰り返し発信し続けることが重要です。
画一的なリーダー像を求める時代は終わりました。性別、年齢、国籍、キャリア背景など、多様なバックグラウンドを持つ人材がリーダーとして活躍できる組織を目指すべきです。
多様なリーダーシップが存在する組織は、変化に強く、革新的です。DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を推進すれば、結果として管理職候補者の母集団を広げ、組織全体の活力を高めることにつながります。
まとめ:管理職不足は経営課題。今こそ、未来への投資として全社的な変革を

本記事では、管理職不足の深刻な現状から、根本原因、解決に向けた5つの戦略までを詳しく解説しました。
管理職不足の問題は、人事部だけでは解決できない、企業の持続可能性を問う経営課題です。
重要なのは、管理職のポストを埋めることではなく、社員が「なりたい」と思える魅力的な役割へと作り変えることです。
業務の見直し、報酬・評価制度の改定、計画的な育成体系の構築、そして挑戦を後押しする組織風土への変革を伴う、全社的な取り組みが必要です。
まずは自社の現状を分析し、どこから着手すべきかを見極めることから始めてみましょう。
チェンジウェーブグループでは、管理職不足やカルチャー変革の問題に関して、以下の3領域を中核としたマネジメント変革プログラムや研修をご提供しています。
- アンコンシャス・バイアス測定・組織診断:無意識の思い込みを可視化し、適切な評価・育成へ
- 多様性マネジメント・リーダーシップ:多様な個を活かすリーダーシップの実践
- マネジメントの基礎と実践: 部下の自律性を引き出し、チーム全体で成果を上げる
自社だけでの取り組みに不安がある場合には、ぜひお気軽にお問い合わせください。
監修者
Designing Your Life ジャパン 認定講師|静岡市男女共同参画審議会委員(2017~2019)
鈴木 富貴(すずき ふき)
所属:株式会社チェンジウェーブグループ 執行役員
経歴:静岡放送株式会社で報道記者・ディレクターとして勤務後、渡米。
ニューヨークの生活、教育をテーマにコンテンツ作成を行う。
帰国後はキャリア・ジャーナリストとして働き方改革、ダイバーシティ経営企業の取材・執筆を開始。社外メンタープログラムの企画・講師も務めた。
株式会社チェンジウェーブ参画後は、大手企業の組織変革、ダイバーシティ推進のアドバイザリー、人材開発に携わるほか、アンコンシャス・バイアスに関する講演、研修、商品開発や異業種プラットフォームの企画・講師を担当。