異業種女性幹部候補育成「GETプログラム」インタビュー
「女性だけの研修」を越えて商船三井が見つけた、
経営層育成の形
「女性活躍は進んできたが、部長層・経営層への登用となるとなかなか難しい」
そんな課題を感じる企業は少なくありません。
女性経営層を輩出し、日本企業における意思決定層の多様化を図るため、
チェンジウェーブグループでは、異業種女性経営人材育成プログラム「GET」を開催しています。
※GETについて、詳しくはこちらからご覧ください(URL)
本記事では、GET第1期に参加された株式会社商船三井の山岸さん、間瀬さん、
お二人を送り出した人事部門の高林部長にお話を伺いました。
性差を意識せずに働ける風土を持つ同社が
なぜ「あえて女性限定」の研修に参加を決めたのか。
経営層へのステップアップには、何が必要だったのか。
その気づきと変化を紐解きます。
■お話を伺った方 (肩書はGET参加当時)
株式会社商船三井
山岸 恵 様 (取締役会室 室長代理 兼 秘書・総務部 部長代理)
間瀬 公美子 様 (鉄鋼事業群第一ユニット チームリーダー)
高林 暁 様 (人事部長)
■聞き手
チェンジウェーブグループ 執行役員 鈴木富貴
女性だけの研修を今さら? 戸惑いから始まった挑戦
――今回のプログラムにどのようなお気持ちで参加されたのか教えてください。
山岸恵さん(以下、山岸)
「ついに自分にも来た」というのが率直な感想でした。
ただ、商船三井では、これまで性差をあまり感じずに働いてきましたから、『女性だけの研修を今さらやるの?』とも、正直思いました。

間瀬公美子さん(以下、間瀬)
私も同じです。男女の差を感じずに働いてきたので、女性対象の研修と聞いて少し不思議でした。
ただ、経営人材育成の研修ということで光栄に思いましたし、「頑張ってこい」という会社の期待だと捉えていました。

山岸
商船三井はこの数年で利益が大幅に増加し、財務基盤も含めて変化が著しい状況です。この変革期をどう進めていくか、会議などでも相当議題にのぼっています。
そうした中で『明日から部長をやってね』と言われたら難しいだろうな、と漠然と感じており、そう感じるのはなぜだろう、という疑問は持っていました。
周囲はどんどん経営幹部やチームリーダーとして役割を果たしている。これまで男女関係なくアサインされて働いてきたはずなのに、私はどうしてそう思うのだろう……と。
この感覚を見極めたいという思いはありました。
―当初からご自身が経営幹部を目指すという意識はお持ちだったんですね。
山岸
明確にどこを目指すか、というのがあったわけではありません。ただ、組織の大きさに関わらず、意思決定できる、経営的な部分を担えるようにという意識はありました。いつまでも現場の実務をやっているわけにはいかない、というような。
ただ、それに向けて何か具体的に努力するというところまではできていなかったと思います。
間瀬
私は営業部門で予算を作ったり、部の経営計画を練ったりする仕事を担当していましたので、比較的イメージはあったと思います。ただ、目標として動いていたかというと、そこまで具体的には意識していませんでした。
「自分の中にもあった」壁に気づいて向き合った先に
多様性を力に変えるキャリアが見えた
ーGETプログラムの初日は、「Why me?」──なぜ自分が経営層に?という問いから始まります。
心理的安全性の高い環境でアンコンシャス・バイアスの理解や内省ワークを通じ、自分自身の思考の枠に気づくプロセスです。
実際に受講されて、どんな気づきがありましたか?
間瀬
当初は「女性対象」という枠組みに疑問を持っていましたが、実際に集まってみると、共通した不安・悩みもあり、ある意味とても新鮮でした。
例えば、現業では比較的狭く深い業務をしているため、管掌範囲が広い仕事に就くことに対して『うまくやれるのかな』という漠然とした不安があったこと。
また、家庭との両立に悩み、キャリアにブレーキをかけてしまうこと。『ああ、自分にもある』という気づきが多く、非常に良い経験になりました。
また、ロールモデルセッションで女性の先輩方のお話を伺えたのも良かったです。キラキラしたサクセス・ストーリーではなく、活躍されている方々にも色々な悩みや葛藤があり、チャレンジを重ねてこられたのだなと感じました。
あと、印象に残っているのは、プログラムにあった『経営に刺さる提言とは何か』です。『人が納得して動く』というのがどういうことか、忙しい人に一瞬だけでも注目してもらう方法など、テクニカルな部分の学びも大きかったです。

山岸
プログラムに並走する形で実施いただいた1on1も良かったですし、最終日のプレゼンを準備するにあたり、自社の経営幹部の話を聞いたことにも大きな意義がありました。
今後のキャリアとして目指す具体的なポジションはまだ見えていないものの、自分の向かう方向性がはっきり見えてきました。
―差し支えなければ、具体的にお聞かせいただけますか?
山岸
私の商船三井におけるキャリアは、当社の経営層の多くが歩んできたいわゆる「王道」ではありません。かといって、それを今から変えることはできません。
けれど、このプログラムを経て、王道ではないことをネガティブに捉えるのではなく、自分の経験と強みを活かして商船三井が目指す多様性の道へ進めばいいのでは、と考えられるようになったのです。
自分の志を踏まえて、ここでどのような価値を発揮するか、そしてそうした道もあることを次の世代に示せるのではないか、と。
当社では現在業容の拡大が進んでおり、急速に変化する現場を支える屋台骨、すなわちコーポレート機能もまた変化と強化が必要な時期にきているのではないかと考えています。どんな形になるかは分かりませんが、これまでの経験と強みを活かして貢献したいと思っています。
心理的安全性の高い場で異業種他社と高め合い
隠れていた本心に気づいた
―大変だったプログラムはありましたか?
間瀬
何が自分にとって限界だと思っているのかを知るための『免疫マップ』です。
佐々木さん(チェンジウェーブグループ代表・佐々木裕子)が、『これは心理的安全性が非常に大事なワークです』と前置きしてから始めたのですが、実際、自分の心情を吐露する場面が結構ありました。
――少人数で、悩みや不安を共有できる場が作られていないと、なかなか気持ちを出せないですよね。そこはプログラム設計上、とても大切にしています。
間瀬
はい。安心感があったからこそ、あの時間が持てたのだと思います。
私自身は、言語化することによって『え、ちょっと待って、こんなに小さなことを私は気にしているの?』と気づくことができ、すっと軽やかになれました。
ただ、日常生活の中で、ちゃんと立ち止まって「自分の限界」もしくは「そう思い込んでいること」、その要因について考える機会はないですよね。改めて問われると、苦しいことにも向き合うことになりますから、ぐんと成長できる機会になる一方で、しんどい方もいたと思います。

―異業種の方々と切磋琢磨できるのもGETの特徴かと思います。どのように感じられていますか。
山岸
私は、25年間同じ会社、同じ業界で仕事をしているので、他業種の方とお話しさせていただいたのは非常に興味深かったです。
皆、モヤモヤした気持ちを抱えながらも、手を抜かずに前向きに取り組んでいて、諦めている人がひとりもいなかったのが印象的で、温かい気持ちで毎回のセッションを後にしていました。
女性という属性は同じなのですが、それ以外はかなり多様なバックグラウンドで、仕事に対する考え方も全然違っていて、そこに触れられたのがとても良かったです。
もしかすると全員女性だったのが良かったのかもしれません。
経営を疑似体験し、視座が変わる
その体験で現在地も未来の見え方も変わる
―プログラムでは、ケーススタディを通じて「経営層の視座・視点」を疑似体験していただきました。どんな学びがありましたか?
間瀬
案件を局所的に見るのではなく、全体感を持って考える必要性を実感できました。
山岸
私は経営企画部長という役割想定でしたが、会長や社長役の講師とのインタビューを通じて「経営層はこういうところを見ているのか」という違いを実感しました。
背景や利害が異なるメンバーに自分の考えを伝え、理解してもらうための説明や認識の合わせ方についても大きな気づきがあり、多様な場に身を置いた意味があったと思います。
―改めて、プログラム全体の感想やご自身の変化をお聞かせください。
また、こんな方に受けてほしい、というおススメポイントがありましたらお願いします。
間瀬
受講前は、自分のチームをまとめ、足元の仕事をどう上手く回すかに邁進していたので、新たなことを学ぶ余裕もなく、『これからどうしたいのか』にまで考えが至りませんでした。
しかし、このプログラムを受講したことによって視座がぐっと上がり、自分なりの軸や志を持って取り組んでいきたいと思うようになりました。大きなきっかけをいただいたので、これからどういうアクションを取るか、受講後はずっと考え続けています。
山岸
プログラムを通して「あなたは何がしたいの? どうなりたいの?』と、問われ続けたことで、意識はもう、明確に変わりました。
ですから、会社の中で、これからのキャリアについて少し悩んでいる人には、このGETプログラムをぜひ受けてみてほしいですね。
『なんかここまで来ちゃったけど、私この先どうするのかしら?』という人には、きっと、大きなきっかけになると思います。

人事部門の方から
経営層の視点を体感し「できる」と思うきっかけに

株式会社商船三井 人事部長
高林暁 様
先駆者は出にくい。だからこそ、背中を押す機会をつくる
商船三井で女性リーダーが増えていくことは確信として持っていますが、部長・役員といった経営層への登用において、先駆者となるには躊躇が生まれやすい局面があるかもしれません。
能力や実績が十分にあっても、経営層が具体的にイメージできないことや、経験不足からくる不安が、無意識のブレーキになる。
その見えない壁を乗り越える機会にしたい、後押ししたいと思い、今回2名を参加させました。
GETプログラムでは、最終日に「自社の役員として」登壇し、皆さんの前でプレゼンをしますよね。これは「やってみなさい」と言われて初めて「その視点で考える」ことができる、ということだと思います。自分の話だと思えるとスイッチが入りますよね。これはどんな役職でも同じだと思います。
実際、2人のプレゼンを見て、大変頼もしく感じました。
また、自社だけでなく、他社の方々のプレゼンも見て議論することで「経営とは何を見て、どう判断するのか」という解像度が上がりますし、非常に学びが大きいと感じました。
不安は「まだやったことがない」から。
「できる」という体感を生み出す
女性幹部候補の方々の中には
「完璧でないといけない」「ゴルフに行かなくてはならない」「夜の会食にも出なくてはいけない」といった”経営者像への思い込み”によって、過度にハードルを高く設定してしまうことがあります。
経営計画の全体整備も、部下の統率も、何もかも全部できなくては…という声も聞きますが、そんな必要はないんです。
実際には、足りない分をどのように補完し、周囲とどう役割分担するかを考えるという視点が大事。一人でやろうと思っても失敗します。
「覚悟を決める」というと大きな話に聞こえるかもしれませんが、実際、リーダーになれば、働き方も含めて自分で決められることが増え、楽になる部分もあります。
「その立場になれば自分にもできる」または「できる状態へつながっている」という手応えと、
「できない部分があれば互いに補完し合えばいい」という気づき。
それらを得られたことが、GETに参加した一番の成果ではないかと思います。
自分の軸を持って意思決定できる
リーダーシップを取れる人材に
「自分が一体何をやりたいのか」「自分はどうなりたいのか」「このチーム、会社をどうしたいのか」
自分の軸や使命感を持ち、リーダーシップを発揮できる人材は、企業にとって大変重要な財産です。
GETプログラムは、仕事にプライドを持ち、自分なりのリーダーシップを発揮しながら進んでいける人たちを育てる、非常に有効な育成の場であると手応えを感じています。
■GETプログラム第4期募集ページ
https://changewave-g.com/news/announce/get-the-4th/
■GETプログラムご案内ページ