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なぜ女性部長数は1年で1.7倍に増えたのかSCSKに学ぶ、経営層パイプラインの再設計と実践

人的資本経営が重視される中、多様な人材の活躍を目指し、人材ポートフォリオの整備や育成・リスキリングに取り組む動きが広がっています。

では、部長や役員といった経営の意思決定を担う層の多様性はどのように形成されていくのでしょうか。
例えば、女性登用という観点で見ると、プライム上場企業の全役員約1万8千人のうち、社内昇格による女性役員は415人。部長クラスでも、男性約23万人に対し女性は約2.2万人にとどまります。

管理職層の拡大から、その先の経営層登用へ。
この移行をどう設計するかが問われています。

本記事では、この問いに向き合ったSCSK株式会社の事例をご紹介します。

同社では2024年度、女性部長数が19名から33名へと増加しました。
なぜ、わずか1年でこの変化が生まれたのでしょうか。

働き方改革を土台に、意思決定層の多様性をどのように設計したのか。その具体像を紐解きます。

SCSK株式会社
執行役員 人事分掌役員補佐(DEIB・Well-Being推進担当)河辺恵理氏

SCSK株式会社
DEIB・Well-Being推進部 部長 村松栄子氏

株式会社チェンジウェーブグループ
代表取締役社長 CEO 佐々木裕子

「管理職の先が難しい」多くの企業が直面する壁をどう越えたのか

佐々木裕子(以下、佐々木)
これまで企業の幹部・リーダー育成をご支援してきた中で、よく伺うのが「管理職層は増えてきたが、部長・役員への登用との間にギャップがある」という声です。女性活躍推進を継続してきた企業であっても、この段階で足踏みしているケースは少なくありません。

評価や昇格基準そのものは公平に設計されている。
けれど、その前段階である育成プロセスには「無意識の偏り」が入り込む余地があります。

SCSK様では、この「見えにくい部分」に正面から取り組まれました。
まずはその背景からお聞かせください。

河辺恵理氏(以下、河辺)
まず前提をお伝えすると、SCSKは、経営理念の筆頭で「人を大切にします」と掲げています。ITサービスは人が価値を生むビジネスであり、社員全員の健康と成長が事業発展の礎であると考えているからです。

そして、人的資本経営という観点では「働き方改革」からスタートしています。
女性活躍推進には2006年から取り組んできましたが、長時間労働の削減で一気に進み、「なでしこ銘柄」にも10回選定されています。
2024年度からはDE&Iに「共に働く(Belonging)」を追加し、DEIB(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン・ビロンギング)に変更。推進方針は「すべての人材がその能力を最大限発揮できる『働きやすい』『働きがい』のある会社を目指す」としました。

転換点は2023年。「女性のため」でなく「会社のため」を明確化

河辺
遡ると2006年からこれらの取り組みは始まっていますが、現在の成果に至るまでに、大きな転換点がありました。

2023年頃、女性活躍推進プログラムの現場から「なぜ女性だけが対象なのか」という声が上がったのです。
そこで、目的を明確に再定義しました。
これは女性のためではなく、「経営の意思決定の場に、多様性を確保するための取り組み」だと。会社の持続的な成長に必要な、経営戦略だと位置づけました。

村松栄子氏(以下、村松)
属性の話ではなく、意思決定の質の話に整理したことで、育成される側・する側の意識が変わりました。「会社の成長のためであれば頑張ります」と前向きに受け止めてくれました。

評価・昇格基準は公平。その手前の育成格差に気づいた

佐々木
では、具体的な取り組みを進めるにあたり、重視した点についてご説明いただけますか?

村松
はい。課題を特定し、一つひとつ手を打った結果だと思っているのですが、中でも注目したのは「見えない登用プロセス」でした。

女性の育成と言うと、多くの企業で「逆差別ではないか」という懸念を持たれることがありますが、私たちが分析したのは「個別育成」の課題です。

昇格試験などの制度に差別はありません。ただ、その手前に、明文化されていない育成格差があるのではないか、と。

誰に重要案件を任せるのか。
誰が非公式な場で情報を得るのか。
誰が将来の期待をかけられているのか。

育成する側の上司に男性が多い場合、無意識に自分と似たタイプを選んで機会や情報を与えてしまう可能性があります。そうであれば、昇格対象になる手前で既に経験・情報量の差がついてしまうと思いました。

そこで、「見えないプロセス」を可視化し、女性に対して意図的な育成を行うことに注力しました。これは、逆差別ではなく、傾いた天秤をまっすぐにする取り組みだと考えています。

河辺
このほか、当社にはもう一つ課題がありました。
45歳以上の女性が物理的に少ない、という状況です。過去、ライフイベント期に退職した女性が多かったことが影響していると考えられます。昇格させたい層の女性がかなり少ないのです。

佐々木
年齢構成の問題は変えにくい、という声も聞かれますね。
母集団が少ない状況で、どのように再設計するかが問われます。

河辺
だからこそ、早期育成を含めて意図的に経営層を育てる視点が必要だと考えました。
年功序列を考えると抜擢しにくい、という企業もあると思います。

ただ、若手であっても優秀な女性を早期に登用していかない限り、多様性は実現できないということを経営会議の中で役員の皆様に認識していただきました。

具体的には、今いる人材の中でどうするか、ではなく、今後の経営層をどう作るか、
という視点を持ち、2つの経営風土と3つの施策で乗り越えようとしています。

例えば、昇格推薦枠を特設し、年功序列では挙がってこない方の推薦をお願いしました。
ただ、合否は明確に、実力によって決まりますので、育成は不可欠です。
専門性認定制度や教育体系で、社員の公正な評価と成長の後押しもサポートしています。

サポーター制度で育成責任者を明確にする~育成と登用を分断しない

河辺
育成という面では、計画を明らかにし、若手の段階から経営層を見据えて3つの階層別プログラムを実施しています。

1. ステージアップ(課長育成)
2. サポーター制度(部長育成)
3. サポータープラス制度(役員・本部長育成)

特に重要なのが「サポーター制度」です。

育成対象者の2階層上の役職者(本部長など)が「サポーター」となり、育成責任者として関わります。単なるメンターではなく、登用を任命する立場です。 
こうした取り組みにより、女性部長数は2023年度の19名から、2024年度には33名へと大幅に増加しました

佐々木
女性部長が1年で1.7倍になるというのは驚異的です。
無意識に起きている情報の非対称性や期待の差を、構造的に是正する仕組みが作られた結果ですね。

河辺
2025年度は、役員候補者向けにチェンジウェーブグループの「事業戦略立案スキル研修」を導入し、
事業のリーダーシップを取れる人材育成を強化しています。

また、サポーター(上司)向けにも説明会を行い、アンコンシャス・バイアス研修を実施しました。 

村松
上司(サポーター)向けの研修効果は非常に大きかったですね。アンケートでも「無意識のバイアスが育成を阻害していたことに驚いた」「女性は自信がないだけ(インポスター症候群)というのは目から鱗だった」といった声があり、意識的に活動する必要性を理解してもらえました。 

また、この研修動画を女性側(育成対象者)にも見せたことで、育成する側・される側双方が同じメッセージを受け取り、納得感を持って進められました。

河辺
サポーターの方々が、研修を通じて「女性登用は会社として必要だ」とポジティブに受け止め、腹落ちしてくれたことを嬉しく思いました。

また、育成対象者向けのキックオフでは「これは女性活躍でも、ゲタを履かせることでもない。SCSKの10年後を面白くするための経営戦略だ」と伝え続けていますが、今回の成果は、経営会議から現場まで、会社としての意思がしっかり伝わった証拠だと思います。

上位役職者に求められる「事業を語る力」をどう養うか

佐々木
「事業戦略立案研修」では、「手加減なしで」というご要望をいただきました。どういう想いを込められていましたか?

河辺
はい、以前、女性リーダー候補者が社長に提言を行ったのですが、組織風土をテーマにしたものが多く、事業の話が出てこなかったのです。本部長になるなら、事業を語れなければならない。
そこで、実践型の事業戦略立案研修を導入したいと考えました。

佐々木
設計段階で重視したのは、単なるスキル研修ではなく、意思決定層に求められる視座を明確にすることでした。

参加者の皆さんは半年後には事業について自信と熱を持って語っておられました。機会があり、「なぜ自分なのか」が腹落ちできれば、すごいパワーで応えてくださるのだと改めて実感しました。

「自信がついてから挑戦させる」という考え方もありますが、実際には「疑似体験し、挑戦したからこそ視座が上がる」。その機会を戦略的に作り、「期待」と「挑戦機会」を設計したことが、今回の成長につながったのだと思います。

土台としての働き方改革 これまでの取り組みが基盤に

佐々木
ここまで踏み込み、成果も残された基盤には、長年のお取り組みの力があると思います。
ここで少し、その歴史をご紹介いただけますか。

河辺
スタートは2006年です。「入社10年で女性社員の7割が退職している」という衝撃的なデータが経営に提示されました。
特に出産を機に離職するケースが多く、企業としてその損失は看過できない。社長の強い危機感から「女性活躍プロジェクト」が発足しました。

フェーズ1:人材流出を止める(2006年〜)

【主な施策】

  • 産休・育休前後の三者面談(本人・上司・人事)
  • 上司向け復帰セミナー
  • 家族への手紙送付
  • 転居費用補助
  • 復職支援プログラム

両立支援の結果、2011年には入社10年後の女性離職率は3割まで改善し、男性と同水準まで下がりました。
また、上司向け復帰セミナーでは、「子どもがいるならこのプロジェクトにアサインするのは控えておこう」などといった「良かれと思った配慮」で成長機会を狭めない、ということも強く伝えてきました。

フェーズ2:長時間労働の是正とキャリア停滞の打破(2012年〜)

次に見えてきたのは、長時間労働と女性のキャリア停滞でした。
フルタイムで勤務していたとしても、夜間の会議で重要な意思決定がされるという状況では、プロジェクトリーダーとして責任は果たせない、となってしまいます。
2012年からは、「働き方改革」と「女性活躍推進プログラム」をスタートさせました。

また、「スマートワーク・チャレンジ」として、

  • 残業月20時間以下
  • 有給取得率100%

という目標を2013年に掲げました。
高い目標ではありましたが、トップダウンで改革を推進し、3年で目標を達成。
これは、残業代がつく若手だけでなく全社員、課長、部長を含めて全員の平均であり、チームや組織で力を合わせて工夫や効率化を実施した結果です。
働きやすさと業績向上を両立し、働き方の意識を変えたと言えるのではと思います。

また、2012年時点で女性管理職は14名でしたが、
「女性ライン職100名登用」という明確な目標を掲げ、2019年度に達成。
目標を明確に掲げたことと、継続的施策が推進力となりました。

フェーズ3:女性活躍からの進化・経営戦略としての多様性確保(2023年〜)

2022年度から女性の部長級への登用と高度専門人材の育成を新たな目標としていましたが、2023年度が取り組みの転換期だったことは冒頭にご紹介したとおりです。

女性活躍ではなく、経営の意思決定の場の多様性を確保する。
会社の持続的成長のための経営戦略である、と経営会議でも意識合わせを行いました。

組織を動かすのは「数字」と「確信」

佐々木
最後に、これから取り組まれる企業様へメッセージをお願いします。

河辺
テクニックとして重要なのは「数字を見せる」ことです。経営層や事業部門は数字で判断します。
例えば2030年のシミュレーションを提示し、「このままだと女性役員は増えない」と危機感を共有することが、現場を動かす力になります。
数字を活用しながら、現場に理解を促し後押をしていただきたいと思います。

村松
同時に、人事の担当部署が確信と信念を持って熱量高く推進することが結果につながるとも思います。
会社の未来に必要な取り組みだと確信して伝え続けることではないでしょうか。

佐々木
SCSK様の取り組みは組織変革そのものですね。
制度を整えるだけでなく、自社の本質的な課題に迫り、構造を見て動かしていく。
そこが、次の10年を左右する分岐点になるのではないでしょうか。

「熱量」と「数字」、そして「経営戦略としての位置づけ」。
本日は大変貴重なお話をありがとうございました。

※本インタビュー記事の内容は、2025年11月開催の「HRカンファレンス」(日本の人事部主催)の講演動画(オンデマンド配信)にて、詳しくご視聴いただけます。
https://angle.changewave.co.jp/seminar/special33

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女性経営層育成プログラム GET
育成・登用・コミュニケーション課題を可視化する ANGLE Plus

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