トップ - 企業事例 - 心理的安全性は、“ぬるさ”を招くのかオリコ経営層240名が向き合った、マネジメントの実践課題

心理的安全性は、“ぬるさ”を招くのかオリコ経営層240名が向き合った、マネジメントの実践課題

女性活躍推進から始まった取り組みを、組織の変革へどうつなげるか。
多くの企業が模索するなか、オリエントコーポレーションが向き合ったのは、知識の浸透にとどまらず、行動をどう変えていくかという課題でした。
同社は、心理的安全性やアンコンシャス・バイアスへの理解を土台に、その先の実践を促す軸として「インクルージョン」を経営課題として掲げ、トップを交えながら取り組みを進めています。
2026年1月に経営層約240名が参加したインクルーシブリーダーシップ研修の様子と、同社が進めるインクルージョン&ダイバーシティについて伺いました。

インタビュイー

岩瀬 香織 氏
株式会社オリエントコーポレーション
インクルージョン&ダイバーシティ推進室長

菅原 智華 氏
株式会社オリエントコーポレーション
人事・総務グループ キャリアデザイン推進部 副部長
兼 インクルージョン&ダイバーシティ推進室

※所属・肩書は取材当時

「変化の加速力」としてのインクルージョン 
ー経営課題としての再定義

―まずは、オリエントコーポレーション様のダイバーシティ推進の取り組みについて、これまでの経緯をお聞かせください。

岩瀬 香織 氏(以下、岩瀬):弊社のインクルージョン&ダイバーシティの動きは、2014年に女性活躍推進チームが立ち上がったところから始まっています。その後、2016年にダイバーシティ推進室を設立。2023年からは「インクルージョン&ダイバーシティ」を基本方針として、経営の中心課題と位置づけました。

―2023年に位置づけを見直した背景には、どのような意図があったのでしょうか。

岩瀬:ダイバーシティの基盤は整ってきており、インクルージョンの方がより重要なフェーズだと考えたからです。トップからは『インクルージョンなくしてダイバーシティなし』という強いメッセージを発信しています。
当時、経営層が当社の「あるべき状態」を何度も議論し、言葉にしたと聞いています。一人ひとりが互いの個性や価値観を前向きに受け入れ、高め合う状態を作ることで、企業価値を向上させたい。そうした思いから、I&Dを単なる人事施策ではなく、経営の核である「変化の加速力」として据え直したと言えます。

知識の浸透の先にあった、行動変容という課題

理解は進んでいても、それが行動や意思決定に結びついているとは限らないのではないか。事務局では、そうした仮説を持っていました。
研修に先立って実施された事前アンケートでも「インクルージョンは経営にプラスの影響を与えると思う」「同質性が高い組織にはリスクがあると思う」という設問に対して高いスコアが示されており、その必要性自体は広く認識されていました。

【事前アンケート①】 「インクルージョンは経営にプラスの影響を与えると思う」平均8.1

【事前アンケート②】 「同質性が高い組織にはリスクがあると思う」平均7.6

(オリエントコーポレーション様事前アンケートより)



菅原 智華 氏(以下、菅原):施策を進める中で、インクルージョンの意義やそれを阻む「アンコンシャス・バイアス」や「心理的安全性」についての知識は浸透していたと思います。ただ、一般論としても、心理的安全性は対立を回避したり、仲良くすることという誤解されがちですし、一歩すすんで理解から行動変容という点ではまだ課題がありました。

アンコンシャス・バイアスや心理的安全性を、それぞれ別のテーマとして扱うのではなく、「会社が目指す姿の実現に向けた一連のつながり」として捉え直してもらい、日々のマネジメントや意思決定の場面でどう実践につなげるか、その中心となる「インクルーシブリーダーシップ」を軸に研修を実施しようと決めました。

―そこでチェンジウェーブグループにお声掛けいただいたんですね。

菅原:はい、こうしたテーマを経営層に対して納得感のある形で伝える必要があると考えたからです。経営課題ではなく社会課題として捉えがちなテーマを、ビジネスの文脈で語れることも大事でした。
ダイバーシティやリーダーシップを、業績や事業とどう結びつけるかというところに一本筋がある。きれいごとではなく、ビジネスとしてどう捉えるか、という点が、当社の考え方とも合っていると感じました。

”きれいごと”では届かない 経営層240名に向けた研修設計

1月に実施された研修は、役員、部室支店長、グループ会社社長ら約240名を対象に実施されました。テーマは「インクルージョンで、変革を加速する」。知識の再確認ではなく、自社の現実に引き寄せて考えることを重視した内容でした。

―今回の研修では、特に「リアリティ」を重視して設計させていただきました。事務局としてどう考えておられたか、改めてお聞かせください。

菅原:今は、綺麗なだけの言葉は響かない時代だと思っています。消費者もそうですし、ビジネスパーソンも、飾られた言葉では動かない。研修でも、参加者全員が自分ごとに引き寄せて考えられるよう、リアリティを大切にしました。

具体的には、次のような設計です。

・無記名のリアルタイムアンケート 
 本音を引き出し、自組織の状態を見つめるきっかけをつくる

・ブレイクアウトルーム(グループ)での対話
 自分の言葉で考え、言語化する機会を設ける

・梅宮社長と講師(チェンジウェーブグループ・佐々木裕子)による対話セッション
 葛藤や試行錯誤を率直に共有してもらう場とする

菅原:特に社長の対話セッションでは、あくまで1人のビジネスパーソンとして、現場にどう向き合っているかをリアルに話してほしいとお願いしました。葛藤や悩みも含めてフラットに出していただくことで、参加者が自分ごととして捉えられるようにしたかったからです。

知識を学ぶ場ではなく、自社の現実と向き合い、意思決定やリーダーシップを問い直す場へ。今回の研修は、その設計に、同社の問題意識が色濃く反映されていました。

“人の良さ”をいかして、もう一歩踏み込んでみる

当日のセッションでは、リアルタイムアンケートを通じて「自組織の現在地」を可視化しました。
そのひとつが、「心理的安全性」に関する問いです。
自組織の状態について「心理的安全性は高いが、高い目標の共有ができていない」と答えた参加者は45.8%でした。

―この結果については、どのように受け止められましたか。

岩瀬:皆さん、驚きというよりは妥当な結果だという感じでした。もともと、当社は「人が良い人」が多いんです。社風としての「人の良さ」を生かすことで、もう一歩踏み込んだ学ぶ組織へとより早い段階で変わることができると確信しました。

―日々、マネジメントでの工夫はあるのでしょうか?

岩瀬:全社的にインクルージョンに注力をして推進してきた効果が出てきていると受けとめておりますが、実際には上司側が気を遣いすぎてしまうこともありますし、上司に率直な意見を伝えることに慣れていない社員が多いことも事実です。自由に意見が言える状態をつくることは大事で、その次の段階にどう進んでいくか。

菅原:正解がないテーマでもあるので、対応の仕方には個人差が出やすいかもしれません。上司も実は自信があるわけではなくて、“これでいいのだろうか”と悩みながらやっているケースも多いのではないでしょうか。


心理的安全性は、組織にとって不可欠な土台です。しかし、それが「配慮」や「安心感」だけにとどまると、意思決定の質向上や組織の成長にはつながりにくくなります。率直な対話と、高い基準の両立。その難しさに、多くのマネジメントが向き合っている現実が浮き彫りになりました。

「小さく試す」から、変えていく

では、こうした課題にどう向き合うのか。
反応として大きかったのは、研修内で示された「一つひとつの行動を小さく変える」「小さく試す」というメッセージへの共感でした。

岩瀬:講義の中では「インクルーシブ・リーダーシップを構成する要素」について解説していただきました。どう実務につながり、最終的にどんな形で組織の成果に結びつくのか。その流れが整理されたことで、理解が深まったと思います。

動画視聴を含めると、800人以上の管理職層がこの内容に触れているのですが、その中でも、“研修で学んだことを、自組織で実践していきたい”という声が多く届いています。

菅原:これまで“心理的安全性”や“新しいリーダーシップ”といった言葉が先行していた部分もあり、“大きく変わらなければいけない”という捉え方になりがちでした。
その中で、“小さくていい”“まずは試してみる”というメッセージが、行動のハードルを下げることにつながったのではないでしょうか。

小さな一歩を一人ひとりが踏み出していくことが、やがて大きなうねりになる。会社が変わろうとしているこのタイミングで、I&Dはその変化を加速させる役割を担う。今回の研修は、その確信を持つ機会になりました。

—本日は貴重なお話をありがとうございました。

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