管理職を育成する方法と課題|候補者不足を解決する育成ポイントを解説

「次世代のリーダーがなかなか育たない」
「プレイングマネージャーの負担が大きすぎる」
「チームがまとまらず部下の離職が止まらない」
上記のような悩みを抱える経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。変化の激しい現代において、管理職の育成は企業の持続的な成長を左右する重要な課題の一つです。
本記事では、現代の管理職に求められる役割の変化、必須スキル、効果的な研修の実践方法について解説します。座学にとどまらず、現場での実践を通じた育成のポイントも解説します。
管理職の育成が企業に必要な理由

管理職の育成が企業に必要な理由は、ビジネス環境の激しい変化に伴い、現場リーダーの役割が高度化・複雑化しているためです。少子高齢化による人手不足や、育児・介護と仕事を両立する社員の増加、働き方に対する考え方の変化など、マネジメントすべき対象の多様化が進んでいます。
自らも実務をこなすプレイングマネージャーも増加し、個人の成果を追求しながら、価値観の異なるメンバーを束ねる難易度は年々高まっています。
組織全体のパフォーマンスを最大化するには、現代の環境に適応したスキルを持つ管理職の育成が欠かせません。しかし従来の経験則や属人的な指導だけでは、管理職人材の育成が困難になっているのです。
現代の管理職に求められる役割とスキル

現代の管理職に求められる役割と必須スキルは多岐にわたります。組織の中核を担うリーダーに必要な要素を見ていきましょう。
管理職に求められる役割
管理職に求められる役割は、組織の方針に基づいてチームを牽引し、組織全体の成果を最大化させる点にあります。プレイヤーとして従事していた時期とは異なり、メンバーを通じて成果を出す視点への転換が求められます。
主な役割は以下の通りです。
- 部門目標の達成に向けた進捗管理
- チームの心理的安全性確保などの環境整備
- 部下の能力開発と納得感のある評価
- 個々の適性を見極めた人材配置
近年では業務管理だけではなく、部下のキャリア自律に対する支援型リーダーシップが期待されるケースもあります。管理職を育成する際には、自社が管理職に求める役割を明確に定義し、育成対象者へ伝えることが不可欠です。
管理職に必要なスキル
管理職に必要なスキルは、業務遂行における実務能力から、人と組織に対するヒューマンスキルまで多岐にわたります。円滑なマネジメントを実現するために習得すべきスキルは以下の通りです。
| スキル分類 | 具体的なスキル例 |
|---|---|
| 業務遂行スキル | – 業務改善スキル – リスクマネジメントスキル – 戦略策定スキル |
| 対人関係スキル | – チームマネジメントスキル – 部下育成スキル(コーチング、フィードバック) – 調整力(他部署との連携など) |
| コンプライアンス | – ハラスメント防止 – 労務管理 – 情報セキュリティ |
| 概念化能力 | – トランスレーションスキル(上位の方針を現場の言葉に翻訳する力) – ロジカルシンキング |
上記の中でも、近年は経営層が掲げるビジョンやパーパスを現場が理解しやすい形で伝える「トランスレーションスキル」が注目されています。抽象的な経営目標を、部下一人ひとりの業務における意義やメリットにまで具体化して伝えることができれば、メンバーの納得感とモチベーションを高め、組織の成果を最大化できます。
管理職の育成における企業と従業員の主な課題

管理職の育成における企業の課題は、大きく分けて組織側の候補者不足と、従業員側のなり手不足の2種類に分類されます。以下の2つの調査結果をもとに、それぞれの視点から具体的な課題を分析します。
参考:リクルートマネジメントソリューションズ「マネジメントに対する人事担当者と管理職層の意識調査2025年」
参考:株式会社チェンジングウェーブグループ「10月16日「ボスの日」に合わせ、管理職に関する意識調査2025の結果を発表」
組織が抱える課題
多くの企業が感じる管理職の育成における主な課題は以下の2種類です。
- 候補者が不足している
- 育成施策が体系化されていない
リクルートマネジメントソリューションズの調査(2025年)によると、46.8%の企業が「管理職候補者の不足」を最大の課題として挙げています。
候補者が不足する背景には、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が影響している可能性があります。潜在的な候補者がいるにもかかわらず「管理職とは〇〇であるべき」と、無意識にふるいにかけていることもあるためです。
また、現場任せの育成も、候補者の成長を阻害する大きな要因といえます。いわゆる「見て盗む」「背中を見て学ぶ」といった属人的な指導や、画一的な集合研修だけでは、変化の激しい現代のマネジメントスキルを習得させることは困難です。
管理職・従業員の課題
一方、育成される側である管理職や候補者たちが直面している課題は以下の通りです。
| 課題 | 背景・要因 |
|---|---|
| 管理職志向を持てない | 責任が重くなる、業務負荷が増える、給与が見合わないといったネガティブなイメージが先行し、昇進を望まない若手・中堅層が増加。 |
| 目指したい上司がいない | 身近に目標となるリーダーがおらず、管理職としてのキャリアパスを具体的にイメージできない。 |
| 管理職の負担が大きくなった | プレイングマネージャーとして自身の業務とマネジメントを両立しなければならず、常に時間に追われ、心身ともに疲弊している。 |
| マネジメント経験が不足 | プレイヤーとしては優秀でも、部下を指導・育成した経験が乏しく、どのようにチームを率いれば良いかわからない。 |
| 理想と現状のかい離 | 企業から求められる管理職像と、自分自身の能力やスタイルとのギャップに悩み、自信を喪失してしまう。 |
チェンジウェーブグループの調査(2025年)では、若手社員(25~34歳)のうち「自分も目指したいと思う上司がいる」と回答した人はわずか18.9%でした。管理職の役割が多様化し、難易度が上がる中で、負担ばかりが強調される現状が次世代リーダーの育成をより困難にしている側面があります。
管理職人材を育成する研修の進め方

管理職人材を育成する研修は、自社の課題に合わせたプログラムの設計が不可欠です。以下では、効果的な管理職育成研修を実現するための具体的な研修の実施方法を、流れに沿って解説します。
管理職研修の目的
研修プログラムを設計する前に、研修の実施目的を明確にすることが重要です。研修の目的が曖昧なままでは、課題解決に直結するプログラムは作れません。
管理職研修の主な目的には、以下のようなものが挙げられます。
- 管理職としての役割認識と視座の転換
- チーム成果を出すマネジメントスキル習得
- 組織を牽引するリーダーシップ能力の向上
- 円滑な対話を生むコミュニケーション能力
- 本質的な課題を見抜く問題解決能力の強化
上記をすべて詰め込むのではなく、自社や育成対象者の現状課題と照らし合わせ、弱点に重点を置いたカリキュラムを選定しましょう。結果として、受講者の学習意欲と投資対効果も高まります。
管理職研修の流れ
管理職研修は単発のイベントで終わらせず、現場での実践を通じて定着させることが重要です。学習・実践・振り返りのサイクルを継続的に回していきましょう。
以下に示すのは、管理職研修の標準的な流れの一例です。 構成の軸として、経験学習モデル「70:20:10の法則(ロミンガーの法則)」の比率を一案として取り入れています。
この内容はあくまでベースとなるモデルケースですので、解決したい課題や組織のフェーズに合わせて内容をアレンジし、独自の研修プログラムとして柔軟に構築・活用することが可能です。
| ステップ | 内容 | 70:20:10の法則 |
|---|---|---|
| 1. 研修・eラーニング | マネジメントの基礎知識やスキルを体系的に学ぶ(インプット)。 座学に加え、ケーススタディやグループワークを取り入れるとより効果的。 | 10%(研修) |
| 2. 現場での実践(OJT) | 研修で学んだことを、実際の業務(部下との1on1、目標設定など)で意識的に実践する。 | 70%(経験) |
| 3. 振り返り・フォローアップ | 定期的に研修を実施し、実践での成功体験や失敗談を共有する。上司やメンターからのフィードバックを受ける。 | 20%(他者からの学び) |
| 4. 改善・次の実践へ | 振り返りから得た気づきをもとに、次の行動計画を立て、さらなる実践につなげる。 | – |
上記のサイクルを組織的にサポートすることで、本人の自信と成長を促進することができます。このような育成施策を活用しつつ、さらに高い効果を目指すために継続的な改善も行いましょう。
管理職育成施策の効果を高めるためのポイント

管理職育成施策の効果を高めるポイントは、研修以外の環境づくりにあります。本人の意欲を引き出し、学んだスキルを現場で最大限に発揮させるための具体的な支援策を解説します。
研修前に課題と補うべきスキルを明確にする
研修の設計に着手する前に、受講者の現状を正確に把握し、研修で補完すべきスキルと解決すべき課題を明確にしましょう。
課題や弱みの抽出にはアセスメントツールなどが有用です。対象となる管理職(または候補者)一人ひとりが抱える課題や、強化すべきスキルを客観的なデータに基づいて特定します。現状分析の結果をベースに、個々のニーズに合った効果的な育成プランの設計が可能です。
期待する役割と責任範囲を明確にする
特に新任管理職に対しては、企業として期待する役割と責任範囲を明確にすることが大切です。
管理職候補の多くは、業務範囲が曖昧なまま責任だけが重くなることを懸念しています。以下の方法で自分の裁量で決められる範囲と上司に相談すべき範囲を明確に示し、候補者の不安を軽減しましょう。
- ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成する
- 昇進時の面談で期待値をすり合わせる
本人と上司、人事の間で共通認識を持つことで、スムーズな自律を促せます。
理想の管理職像をイメージしてもらう
育成対象者に理想の管理職像をイメージしてもらいましょう。
目標となるロールモデルがいないと、候補者は自身の明確な将来像を描けません。社内の優秀なリーダーとの座談会や、他社の管理職と交流する機会を提供しましょう。
多様な業界のリーダーと接することで固定観念が和らぎ、管理職への心理的ハードルも下がる可能性があります。自分なりのリーダー像が見つかれば、昇進への意欲も自然と高まるはずです。
裁量ある仕事を与え成功体験を積ませる
研修と並行して裁量ある仕事を与え、実践させる方針をとることが大切です。座学で知識を習得しても実践しなければスキルは定着しません。
最初は小さなプロジェクトのリーダーや会議の進行役など、失敗しても組織としてフォロー可能な範囲から任せると良いでしょう。自らの判断でチームを動かし、成果を出した経験は確かな自信(自己効力感)につながります。
成功体験を重ねることで管理職としての振る舞いや考え方が定着し、昇進後のいわゆるリアリティ・ショックも軽減されます。
人事や上司がフィードバックを行う
実践の後は研修担当者に任せきりにせず、人事や上司がフィードバックを提供しましょう。本人は自身の行動が正しかったかどうか、客観的に判断できない場合があるためです。
定期的な1on1ミーティングを設け、良かった点と改善点を具体的に伝えましょう。適切な評価と助言を受けると、本人は成長を実感でき、次のアクションへのモチベーションを維持できます。管理職候補は孤独になりやすいため、組織全体でサポートする姿勢を示すことが大切です。
管理職の育成を支援するチェンジウェーブグループのサービス

管理職の育成がうまくいかない原因は、個人のスキル不足だけでなく、組織全体の風土や意識にもあります。チェンジウェーブグループは、個人と組織の両面にアプローチし、自律的に動けるリーダーを育成します。以下は管理職を育成するプロセスの一例です。
1. 組織の変革を阻む要素を知る
まず、マネジメントを阻害する無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)を取り除きます。eラーニングツールANGLEを用い、以下の4ステップで体系的に学習します。
- 動機付け
- 知る・気づく
- コントロールする
- 組織への浸透
自身の思考の癖やバイアスをコントロールできるようになると、多様な部下の力を引き出し、心理的安全性の高いチームを作れるようになります。
2. 管理職の自覚と自信を育てる
次に、現場での実践を通じて管理職としての自信を醸成します。変革カレッジのプログラムでは、受講者が自社の本質的な課題を特定し、解決策を立案・実行します。
机上の空論で終わらせず、経営層や顧客などのステークホルダーを実際に巻き込んで実証実験できる点が特徴です。中間レビューやフィードバックを受けながら成功体験を積むプロセスが、変革を起こせる確信へとつながります。
自ら動けるリーダーを育成したい企業の方は、チェンジウェーブグループへお問い合わせください。
まとめ:管理職の育成は組織風土の変革とセットで取り組もう

組織を動かす管理職を育成するためには、経営層の強いコミットメントのもと、現場任せにせず、企業全体で育成を支援する仕組みと文化を構築することが不可欠です。
古い慣習や無意識のバイアスが残る環境では、新しいリーダーが育つことは困難です。多様な人材が活躍できる組織風土への変革が欠かせません。
株式会社チェンジウェーブグループは、500社以上の大手企業を支援してきた実績をもとに、脳科学や心理学、DE&I経営の知見を融合させ、貴社の管理職育成と組織変革をサポートします。まずは、貴社の現状課題の整理から始めてみませんか。