全社を巻き込む施策設計で、介護をキャリアの制約にしない風土を作る 中外製薬株式会社様(後編)

中外製薬株式会社
人事部DE&I推進グループマネジャー 佐藤 華英子 様
中外製薬株式会社の、2030年に向けた成長戦略「TOP I 2030」では、高い目標を掲げ挑戦し続けていますが、その実行の主体は「社員」であり、戦略実現に向けては、多様な人財が最大限の力を発揮できることが不可欠であると考え「DE&I」を積極的に推進しています。その一環として、仕事と介護の両立支援にも取り組んでいますが、単に福利厚生という視点ではなく「人財マネジメントの重要課題」として取り組んできました。全社を巻き込む施策設計のポイントとデータの活用方法について、人事部DE&I推進グループマネジャーの佐藤様にお話を伺いました。
前編では、ストーリーのある両立支援の施策展開についてお話いただきました。続いて、こちらの後編では、実態把握のデータの活用と経年で見えてきた変化についてご紹介します。
4. 実態把握のデータが「主観」を「経営課題」に変えた
―仕事と介護の両立支援クラウド「LCAT」を活用した実態把握の結果、どのような変化がもたらされましたか。
佐藤様: 最大の効果は、「組織の危機感を客観的な数値で共有できたこと」です。現在介護中の社員に加え、数年以内に直面する「予備軍」を合わせると、全社員の約5割に達することが浮き彫りになりました。この「5割」という数字は、インパクトもあり、「組織運営に関わる重要課題である」という認識につながりました。

参考:サンプル:LCAT受講データ分析レポート。受講後、企業に提供される。管理者である担当者は自社の9セル等について、診断期間中に随時確認できる。
注:弊社プロダクトのデモンストレーション用サンプルデータを用いたもので、導入企業の実データを反映したものではありません。
―具体的なデータによって、議論の質はどう変わりましたか。
佐藤様: 例えば「遠距離介護」の増加もデータで裏付けられました。移動に2時間を要する社員が前回比で10ポイント以上増加しており、働き方の柔軟化に伴い、遠距離でのケアを担うケースが増えています。これにより、「パフォーマンスを維持できる支援」が必要だという、解像度の高い議論が可能になりました。また、LCATのデータから「リテラシー不足の状態では、介護体制構築に40日以上を要する」という予測値が出たことも、危機感につながりました。「部下へ適切なアドバイスができなければ組織運営に影響をおよぼす」という現実的な認識につながっています。
5. 継続的な支援がもたらした「仕事と介護」の両立風土
―2021年と2024年の実態調査を比較して、どのような変化が見られましたか。
佐藤様: 2024年の調査では、介護中の社員を除く層において「介護をしながら仕事を続けられると思う」という回答割合が向上しました。継続的な取り組みが「両立できる」という期待感の醸成に寄与したと分析しています。また、在宅勤務等の浸透により、遠距離介護を抱えながらもキャリアを継続できる可能性が示唆されたことも大きな収穫です。
―社内の風土にはどのような変化がありましたか。
佐藤様: 「会社がこのテーマに真剣に向き合っている」という安心感が、相談のしやすさを生んでいます。「事前に準備していたおかげで、介護直面時もスムーズに体制構築できた」という声や、介護中の社員が上位マネジメント職に登用される事例も出てきました。
6. 社員の「働きがい」の高まりを目指す
―両立支援のKPIの設定について、悩まれる担当者の方も多いです。佐藤様はどうお考えですか。
佐藤様: 制度利用率などの数値だけを追うと、本来の目的である「キャリアの継続」や「多様な人財の活躍」から乖離(かいり)する懸念があります。LCATのデータは、現状をモニタリングし課題を特定するための「健康診断」として活用しています。最終的には、社員意識調査などを通じ、「働きがい」や「輝いている個」が増加していくことを目指しています。
―最後に、両立支援に取り組む担当者の方々へメッセージをお願いします。
佐藤様: 仕事と介護の両立支援は、即効性が見えにくく、迷うことも多いです。しかし、継続的な取り組みを通じて、必ず変化は起きます。まずは「自社ならではのストーリー」を構築し、鍵となるマネジャー層を味方につけること。「人財の活躍につながる」という信念を持って、一歩ずつ取り組んでいくことが大切だと思います。
チェンジウェーブグループでは、仕事と介護の両立支援における各種施策の立案から実行まで、継続的なご支援・伴走を行っております。
「自社に合った具体的な進め方を知りたい」「施策を形骸化させず定着させたい」といった課題がございましたら、まずはお気軽にご相談ください。