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ビジネスケアラー支援完全ガイド|企業が取り組むべき施策や知るべき制度・事例・助成金を解説

「最近、親の介護を理由に休職や退職を相談してくる中堅社員が増えてきた」
「優秀な人材の離職は避けたいが、会社として何から手をつければ良いかわからない」

このような課題は、多くの企業が直面している現実です。ビジネスケアラーの支援は、今や企業にとって避けて通れない経営課題となっています。

本記事では、ビジネスケアラー問題の現状から、企業が今すぐ取り組める具体的な支援策、法改正のポイント、他社の成功事例までを網羅的に解説します。

ビジネスケアラーとは?急増する背景と放置するリスク

ビジネスケアラーは、仕事を続けながら家族の介護を行う人々を指します。彼らが直面する課題を理解し、企業としてなぜ対策が急務なのかを知ることが、支援の第一歩です。

ビジネスケアラーが急増する背景

ビジネスケアラーが増加している背景には、日本社会が抱える構造的な課題が深く関わっています。主な要因は以下のとおりです。

  • 少子高齢化の加速:65歳以上の高齢者人口が増加する一方で、それを支える生産年齢人口は減少している
  • 核家族化の進行:親と子が別々に暮らす世帯が増え、介護が必要になった際に頼れる家族が少なくなっている
  • 共働き世帯の一般化:介護の担い手とされてきた女性も働くことが当然になり、仕事と介護の両立が必須となっている
  • 晩婚化・晩産化:自身の親の介護と、子育ての時期が重なるダブルケアに直面する人が増えている

これらの要因が複合的に絡み合い、ビジネスケアラーの数は今後も増え続けると予測されています。経済産業省の推計によると、その数は2030年には約318万人に達する見通しです。

このデータからも、ビジネスケアラー支援は、もはや一部の従業員に限定された問題ではなく、経営における普遍的な課題であることが浮き彫りになります。

参考:経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」について

介護離職が企業にもたらす深刻な経営インパクト

ビジネスケアラーの増加を個人の問題として放置すると、企業は深刻な経営リスクに直面します。直接的な影響が、経験豊富な中核人材の介護離職です。

年間約10万人が仕事と介護の両立が困難になり、やむを得ず離職を選択しています。特に管理職や専門職として活躍する40代から50代の社員が離職するケースが多く、企業にとって計り知れない損失です。

損失の種類具体的な内容企業への影響
休業介護休業や欠勤による労働力の喪失プロジェクトの遅延
代替要員の確保コスト
チームの生産性低下
介護離職(人材流出)経験やスキルを持つ中核人材の喪失採用・育成コストの発生
組織全体のノウハウ喪失
残された従業員の負担増
生産性低下心身の不調を抱えながら働き、パフォーマンスが低下業務品質の低下
イノベーションの停滞
職場の士気低下

介護離職や、生産性低下による経済損失は、日本全体で年間9兆円を超えると試算されています。これは決して無視できない数字であり、ビジネスケアラー支援がコストではなく、未来への戦略的投資であることを示しています。

参考:厚生労働省「介護離職の防止について~介護休業制度 特設サイト 実践マニュアル、制度概要~」

ビジネスケアラー支援で企業ができる取り組み

ビジネスケアラーが直面する課題は、多岐にわたります。企業には、これらの課題を総合的に支援する多角的なアプローチが必要です。

本章では、企業が具体的に取り組める4つの支援策を詳しく解説します。

1.相談しやすい環境と情報提供

多くのビジネスケアラーは、「会社に迷惑をかけたくない」「プライベートな問題だ」と考え、一人で悩みを抱え込みがちです。従業員が安心して相談でき、必要な情報を得られる環境を整えることが、介護離職の予防に不可欠です。

社内相談窓口と専門家(産業ケアマネジャー)の活用

人事部や総務部に、介護に関する専門の相談窓口を設置することが第一歩です。担当者は、プライバシーに配慮し、従業員が安心して話せる心理的安全性を確保しましょう。

介護と医療の専門知識を持つ産業ケアマネジャーと連携することで、より質の高い支援が可能です。

相談体制のステップ具体的なアクション期待される効果
Step1:窓口の設置人事部内に担当者を配置し、相談窓口を周知する従業員が「相談して良い」という認識を持つ
Step2:担当者の育成担当者が介護保険制度や関連法規の研修を受ける的確な初期対応と情報提供が可能になる
Step3:専門家との連携外部の産業ケアマネジャーや地域包括支援センターと連携専門的なアドバイスや個別支援計画の策定が可能になる

2025年4月からは、従業員から介護の申し出があった際に、企業が利用できる制度を個別に周知し、意向を確認することが義務化されています。この義務を果たすうえでも、相談体制の整備は急務です。

参考:厚生労働省「育児 ・介護休業法 改正ポ イン トのご案内」

外部専門機関との連携

社内だけですべての対応を完結させるのが難しい場合は、外部の専門機関を積極的に活用しましょう。地域包括支援センターは、介護に関する公的な相談窓口であり、無料で利用できます。

また、民間の介護コンシェルジュサービスと法人契約を結び、従業員に提供する企業も増えています。

連携先の例は以下のとおりです。

  • 地域包括支援センター
  • 社会保険労務士
  • 民間の介護相談サービス
  • ケアプラン作成事業所

セミナーやeラーニングによる情報提供と意識改革

介護は突然始まることが多いため、従業員が「まだ自分には関係ない」と思いがちです。そのため、早い段階から情報提供を行うことが重要です。

介護保険制度の仕組みや、会社の支援制度について学ぶセミナーやeラーニングを定期的に開催しましょう。特に管理職向けの研修は必須です。部下から介護の相談を受けた際に、どう対応すべきかを知ることで、職場全体の支援体制が強化されます。

2.柔軟な働き方を実現する制度

介護は、通院の付き添いや急な体調変化への対応など、予測不能なできごとが頻繁に発生します。従業員が勤務時間や勤務形態を柔軟に調整できる働き方の選択肢を提供することで「従業員が仕事の責任を果たしながら、適切な介護体制をマネジメントできること」を支援する姿勢が大切です。

フレックスタイム制・時差出勤

フレックスタイム制や時差出勤は、1日の労働時間を変えずに始業・終業時刻を調整できる制度です。デイサービスの送迎や朝夕のケアなど、特定の時間帯に介護が必要な従業員にとって大いに役立ちます。

制度名特徴活用シーンの例
フレックスタイム制従業員が始業・終業時刻を自主的に決定できるコアタイム以外で通院に付き添う
介護で早退した分、別の日に長く働く
時差出勤複数の勤務時間パターンから選択できる朝のケアを終えてから遅めに出社する
ラッシュを避けて通勤負担を軽減する

時短勤務・時間単位の有給休暇

法定の短時間勤務制度に加え、企業独自の柔軟な制度を設けることも有効です。また、1時間単位で有給休暇を取得できる制度は、「少しだけ役所の手続きに行きたい」「短時間の通院に付き添いたい」といった細切れのニーズに対応できます。

3.経済的負担を軽減する制度

介護には、介護サービス費や医療費、介護用品の購入など、継続的な経済的負担が伴います。休業による収入減は、ビジネスケアラーにとって深刻な問題です。

法定制度を上回る手厚い経済的支援は、従業員の安心に直結します。

法定を超える介護休業・休暇制度の拡充

育児・介護休業法で定められた制度は、あくまで最低基準です。多くの先進企業では、法定を上回る独自の制度を導入しています。

制度項目法定基準企業独自の拡充例
介護休業対象家族1人につき通算93日まで通算日数を180日や1年に延長
3回までだった分割取得を無制限に
介護休暇年5日(対象家族2人以上は10日)年10日以上に拡充
時間単位での取得を可能にする
休業中の給与雇用保険から給与の67%を支給会社独自で給与の一部を上乗せ補填

参考:厚生労働省「介護休業制度特設サイト」

積立有給休暇制度・介護費用補助

失効する年次有給休暇を積み立て、介護が必要になった際に利用できる積立有給休暇制度も有効です。また、介護サービス利用料の一部を会社が補助する制度や、遠距離介護の交通費を補助する制度も、従業員の経済的負担を直接的に軽減します。

GLTD(団体長期障害所得補償保険)の活用

GLTDは、従業員が病気やケガで長期間働けなくなった際の所得を補償する保険です。この保険に特約を付帯することで、介護休業中の所得減少をカバーできます。

雇用保険の給付金と合わせることで、休業中の収入を大幅に安定させることが可能です。

4.最新テクノロジーの活用支援

近年、介護分野でもテクノロジーの活用が進んでいます。企業が介護テックに関する情報提供や導入支援を行うことで、従業員の介護負担を軽減できます。

介護テック・デジタルサービスの導入支援

見守りセンサーや服薬管理アプリ、オンラインでの介護相談サービスなど、さまざまな介護テックが存在します。企業として、これらのサービスに関する情報を提供したり、法人契約で割引価格で利用できるようにしたりする支援が挙げられます。

例えば、チェンジウェーブグループでは、介護の不安が漠然とした段階から、従業員が自律的に両立体制を構築できる企業向け伴走型Webサービス「MyPanorama」を提供しています。

介護中の方はもちろん、従業員が「気にかけている方」について回答を進める中で、漠然とした不安を整理しながら、介護前から使える支援策や情報を段階的にナビゲートします。

介護を理由とした離職の防止や業務への支障による生産性の低下を最小限に抑えることで、従業員が安心して働き続けられる職場づくりを支援するサービスです。

ビジネスケアラー支援の成功事例3選|他の企業から学ぶ

理論だけでなく、実際に他社がどのようにビジネスケアラー支援に取り組んでいるかを知ることは、自社の施策を考えるうえで大いに役立ちます。本章では、先進的な取り組みで成果を上げている企業の事例を3つ紹介します。

鉄建建設株式会社

鉄建建設では、社員のボリュームゾーンが50代であり、介護に直面する可能性が高いことから、2018年よりダイバーシティ推進の一環として仕事と介護の両立支援に着手しました。LCAT調査では、介護中の社員は約6%にとどまる一方、3年以内に介護が始まる可能性が高い層が約48%に上り、対策が急務であることが判明しています。

転勤が多い建設業ならではの遠距離介護にも焦点を当て、ハンドブック作成やセミナー、管理職向け研修などを実施しました。2022年からはLCAT診断で介護リスクを数値化し、eラーニングやメルマガも含めた継続支援へ拡大しています。

満足度は約87%と高く、介護休暇の取得率も改善傾向にあります。

【企業事例】介護リスクの高い50代がボリュームゾーン。建設業ならではの「遠距離介護」の課題解決を目指す ―鉄建建設様―

株式会社日立製作所

日立製作所は、介護に直面する従業員の増加を見据え、2018年から介護離職防止と両立実現を経営課題として位置づけ、支援施策を強化しました。

支援は情報提供・経済的支援・働き方改革・マネジメント改革の4つをトータルパッケージで進め、まず40歳以上向けセミナーや全社員へのハンドブック送付、無料で相談できる介護コンシェルジュを整備しています。費用補助や勤務制度、管理職向け研修も拡充しました。

特に上長の理解が鍵と捉え、部長層向けセミナーは満足度96%を記録しています。制度認知は8割超に上昇し、補助制度の利用も増加しました。

今後は、上長と本人の双方向コミュニケーションを軸に、個別支援型マネジメントをさらに浸透させる方針です。

【企業事例】仕事と介護の両立実現には、トータルパッケージでの支援と管理職のリテラシー向上が不可欠 ―日立製作所様の「仕事と介護の両立支援」―

損害保険ジャパン株式会社

損害保険ジャパンは「Diversity for Growth」を経営戦略に掲げ、社員の幸せと働きがいを重視する中で、仕事と介護の両立支援にも早くから取り組んでいます。2015年以降は毎年複数回セミナーを開催し、延べ1,600名が参加しています。

40歳以上向け研修にも介護を組み込み、継続的に啓発してきました。一方で、介護は「職場で言い出しにくい」「どうせ上司はわからない」と感じられやすく、特に転勤が多い同社では相談のハードルが高いことが課題でした。

そこで鍵になるのが管理職だと捉え、管理職リテラシー研修を導入しています。任意参加にもかかわらず約160名が参加し、半数以上が「部下への助言に自信がない」と回答したことが大きな気づきとなりました。

研修後は自信が高まり、管理職同士で実態を共有できた点も効果として評価されています。

【企業事例】なぜ今、仕事と介護の両立支援策として「管理職リテラシー研修」が必要か ー 損害保険ジャパン様 ー

まとめ:ビジネスケアラー支援はまず自社の現状把握から

ビジネスケアラー支援は、もはや単なる福利厚生ではなく、企業の持続的成長に不可欠な人的資本経営です。

まず取り組むべきは、自社の現状を正しく知ることです。課題の大きさやリスクが見えないまま施策を始めても、必要な支援が届かず、形だけで終わってしまうおそれがあります。

そこで活用できるのが、チェンジウェーブグループが提供する実態把握アセスメント・eラーニングプログラム「LCAT」です。LCATは、仕事と介護の両立支援に必要な以下の2つを、同時に進められるサービスです。

  • 企業として、介護リスクや社内の実態を可視化する
  • 従業員の知識不足や不安を減らし、リテラシーを底上げする

受講者はセルフチェックを行い、診断結果を通じて「自分は何が足りていないのか」「どこから準備すべきか」を整理できます。企業側も、将来的にどの程度の介護リスクがありそうかを把握できるため、先回りした対策が可能です。

さらに年間を通じて、必要な知識や最新情報をプッシュ型で継続提供します。介護が始まった際の体制づくりをスムーズにし、休職や離職につながりやすい期間を短縮することを目指します。

ビジネスケアラー支援を自社だけで進めるのは難しいと感じた場合は、チェンジウェーブグループまでお気軽にご相談ください。

鈴木 富貴(すずき ふき)

監修者

Designing Your Life ジャパン 認定講師|静岡市男女共同参画審議会委員(2017~2019)

鈴木 富貴(すずき ふき)

経歴:静岡放送株式会社で報道記者・ディレクターとして勤務後、渡米。
ニューヨークの生活、教育をテーマにコンテンツ作成を行う。
帰国後はキャリア・ジャーナリストとして働き方改革、ダイバーシティ経営企業の取材・執筆を開始。社外メンタープログラムの企画・講師も務めた。
株式会社チェンジウェーブ参画後は、大手企業の組織変革、ダイバーシティ推進のアドバイザリー、人材開発に携わるほか、アンコンシャス・バイアスに関する講演、研修、商品開発や異業種プラットフォームの企画・講師を担当。

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