「管理職昇進が罰ゲーム化」は本当?構造的原因と抜け出す方法を徹底解説

「管理職は責任が重いばかりで割に合わないと昇進を拒否されてしまった」
「優秀な部下を昇進させようと思っても、現状、罰ゲーム化している管理職に推薦しづらい」
近年、上記のように管理職のポジションが「罰ゲーム化」しているといった声が多く聞かれます。業務量の増加、上司と部下との板挟み、増え続ける責任など、管理職の負担が増えています。
一方で、権限や報酬は十分とは言えず、多くの管理職が疲弊しているのが現状です。
本記事では、なぜ現代において管理職が「罰ゲーム」と言われてしまうのか、構造的な原因を深掘りします。さらに、困難な状況を乗り越え、管理職がやりがいを持って活躍できる組織を作るための具体的な解決策を、企業側の視点から徹底的に解説します。
強い組織づくりのためのヒントをご紹介するため、ぜひ参考にしてください。
8割が「なりたくない」データで見る管理職の罰ゲーム化のリアル

「管理職になりたい」と考える社員は、今や少数派になりつつあります。実際に、パーソル総合研究所の調査によると、「現在の企業で管理職になりたい」と回答した社員はわずか16.7%でした。
つまり、8割以上の社員が管理職になることを望んでいない、驚くべき実態が明らかになっています。
参考:パーソル総合研究所「今後どのようなキャリアを考えていますか?」
管理職になりたくないといった傾向は、管理職の役割が、かつてのような憧れの対象ではなくなったことを示唆しています。責任の重さや業務負担の増加が、昇進によるメリットを上回っていると感じる人が増えているのです。
以上のように、「管理職の罰ゲーム化」の感覚は、単なる個人の意欲の問題ではなく、多くの職場で共通して見られる現象です。
なぜ管理職昇進は「罰ゲーム化」になるのか?5つの構造的要因を深掘り

管理職の罰ゲーム化は、個人の能力や資質の問題だけで片付けられるものではなく、現代の企業組織が抱える根深い構造的要因が複雑に絡み合っています。
本章では、代表的な以下の5つの要因を深掘りし、問題の本質に迫ります。
- 要因1:責任だけが増える「責任と裁量権のアンバランス」
- 要因2:自分の仕事が終わらない「プレイングマネージャーの限界」
- 要因3:板挟みで疲弊|多様化する「調整役」としての負担
- 要因4:仕事が際限なく降ってくる日本特有の「入れ子構造」
- 要因5:【2026年~】法改正による新たな業務負担の増加
それぞれの要因について、以降で詳しく解説します。
要因1:責任だけが増える「責任と裁量権のアンバランス」
管理職は、チームの成果や部下の育成、労務管理など、広範な責任を負います。部下がミスをすれば監督責任を問われ、チームの目標が未達であれば説明責任が求められてしまうのです。
しかし、管理職の重い責任に見合うだけの意思決定権限、つまり裁量権が十分に与えられていないケースが少なくありません。
例えば、新しいプロジェクトの予算や人員配置について、最終的な決定権はさらに上の役職者が持っていることがほとんどです。結果として、管理職は自らの判断で状況を打開できず、責任だけを負わされる理不尽な状況に陥りがちです。
上記のような責任と裁量権のアンバランスが、管理職の無力感や徒労感を増大させる大きな原因となっています。
要因2:自分の仕事が終わらない「プレイングマネージャーの限界」
多くの企業では、管理職がマネジメント業務に専念するのではなく、自身も一人のプレイヤーとして個人目標を持つ、いわゆるプレイングマネージャーであることが一般的です。プレイングマネージャーは、マネジメントと実務の二重の役割を担うことを意味します。
部下の指導や目標管理、会議の運営といったマネジメント業務に時間を取られながら、自身のプレイヤーとしての成果も出さなければなりません。
さらに、働き方改革の影響で部下の残業時間が制限される中、終わらなかった業務を管理職が引き受けるケースも頻発しています。結果として、管理職自身の労働時間が際限なく長くなり、ワークライフバランスは崩壊しがちです。
上記のような、プレイングマネージャー化した管理職の二重の負担が、管理職を心身ともに追い詰める構造的な要因となっています。
要因3:板挟みで疲弊|多様化する「調整役」としての負担
管理職は、組織の中では中間に位置するため、常に多方面からの圧力にさらされています。経営層からは「目標を達成しろ」とトップダウンの圧力を受け、一方で現場の部下からは「業務負荷を減らしてほしい」「キャリアの相談に乗ってほしい」といったボトムアップの要求に応えなければなりません。
上層部と部下からの板挟み状態は、深刻な心理的ストレスを生み出します。加えて、近年ではマネジメントのあり方も複雑化しています。
年功序列の崩壊により年上の部下を持つことも増え、ハラスメントに対する細心の注意も求められます。部下一人ひとりの価値観やライフステージに配慮したコミュニケーションも不可欠であり、「調整役」としての負担は増す一方です。
要因4:仕事が際限なく降ってくる日本特有の「入れ子構造」
日本の組織に特有の問題として、日本特有の「入れ子構造」も指摘されています。入れ子構造は、上位の役職者が本来下位にいる管理職の権限であるはずの業務にまで、階層を飛び越えて直接指示を出すような状態を指します。
管理職の本来の役割や職務範囲が曖昧になってしまうのです。結果として担当者が明確でない業務や、部門間で押し付け合いになりがちなこぼれ仕事が、すべて管理職のもとに流れ込んできます。
トラブル対応や急な経営層からの特命など、際限なく降ってくる業務に追われ、本来注力すべき部下の育成や戦略立案といった仕事に時間を割けません。
上記のような入れ子構造が、管理職の多忙さに拍車をかけています。
要因5:【2026年~】法改正による新たな業務負担の増加
今後の法改正も、管理職の業務負担をさらに増加させる可能性があります。組織として対応すべき課題ですが、実務は現場に委ねられることが多いため、管理職の負担が増加します。
特に注目すべき法改正と、管理職への影響を以下の表にまとめました。
| 法改正・制度変更 (施行・検討時期) | 管理職への具体的な影響 |
|---|---|
| 治療と就業の両立支援 (2026年度~ 努力義務化) | 部下が病気になった際の相談対応、就業調整、代替人員の配置検討など、個別のケースに応じたきめ細やかな労務管理が求められます。 |
| 労働基準法改正 (2026年以降検討) | 連続勤務時間の上限規制や勤務間インターバル制度が義務化された場合、より複雑なシフト管理や人員配置の見直しが必要不可欠です。 |
参考:厚生労働省「治療と就業の両立支援指針 (概要)」
参考:厚生労働省「勤務間インターバル制度」
上記の法改正への対応は、企業の持続可能性にとって重要です。しかし、法改正に対応するための体制整備が不十分なままでは、管理職の負担だけが増え、「罰ゲーム化」をさらに加速させることになりかねません。
あなたの職場は大丈夫?「管理職罰ゲーム化」危険度セルフチェック

前の章まで見てきた構造的要因は、あなたの職場にも潜んでいる可能性があります。以下のチェックリストを使って、組織の「管理職罰ゲーム化」の危険度を客観的に診断してみましょう。
当てはまる項目が多いほど、早急な対策が必要です。
| チェック項目 | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 1. 管理職の責任範囲は明確だが、裁量権の範囲は曖昧である | □ | □ |
| 2. チームの管理職の8割以上がプレイングマネージャーである | □ | □ |
| 3. 管理職が部下の残業を引き取ることが常態化している | □ | □ |
| 4. 上司(役員など)が、管理職を飛ばして部下に直接指示を出すことがある | □ | □ |
| 5. 部門間の調整役やトラブル対応は、特定の管理職に集中しがちだ | □ | □ |
| 6. 管理職が「ハラスメント」を過度に恐れ、部下への指導をためらう傾向がある | □ | □ |
| 7. 新任管理職向けの研修はあるが、後のフォローアップ研修はない | □ | □ |
| 8. 管理職同士が業務の悩みを相談し合う機会や場がほとんどない | □ | □ |
| 9. 管理職の評価基準において、マネジメント業務より個人の業績が重視される | □ | □ |
| 10. 「管理職になりたい」と話す若手・中堅社員がほとんどいない | □ | □ |
【診断結果】
- はいが0~2個: 健全な状態です。今後も管理職をサポートする体制を維持・強化していきましょう。
- はいが3~6個: 注意が必要です。「罰ゲーム化」の兆候が見られます。組織的な対策の検討を始めましょう。
- はいが7個以上: 危険な状態です。管理職が疲弊し、組織の活力が失われるリスクが高いです。早急に構造改革に着手する必要があります。
参考:ライブドアニュース「現場は「人手不足」を主張しても、会社は「上司のスキル不足」と却下…管理職が「罰ゲーム化」する負のループ 」
参考:リクルートワークス研究所「管理職が「罰ゲーム化」した10の要因」
参考:PHPオンライン「“管理職の罰ゲーム化”を深刻にする、上司部下の「入れ子構造」とは 」
「管理職の罰ゲーム化」から抜け出すには?組織と個人ができる具体的な解決策

深刻な「管理職の罰ゲーム化」ですが、決して打つ手がないわけではありません。管理職が罰ゲーム化しやすい問題を解決するためには、組織側からのアプローチが不可欠です。
具体的には、企業文化や制度の改善などが挙げられます。同時に、管理職個人でできる工夫も重要です。
本章では、それぞれの立場から実践できる具体的な解決策を提案します。
【組織編】企業が取り組むべき3つの構造改革
管理職個人の努力だけに頼るには限界があります。罰ゲーム化の根本原因である構造的な問題に、企業全体で取り組むことが重要です。
企業が取り組むべき改革の柱は、「役割の再定義」「業務の効率化」「支援体制の構築」の3つです。本章では、企業が取り組むべき以下の3つの構造改革について解説します。
- 役割の明確化と適切な権限委譲
- DX推進と全員マネジメントによる業務効率化
- 管理職を孤立させない支援体制の構築
1. 役割の明確化と適切な権限委譲
まずは、管理職の役割と責任範囲を明確に定義し、全社で共有しましょう。さらに、定義された責任範囲内で完結できるだけの権限をしっかりと委譲します。
例えば、一定額までの予算執行権や、チーム内の業務分担に関する決定権を与えることで、管理職は自律的に動けるようになります。責任と権限のバランスを是正すれば、管理職の主体性とモチベーションを引き出せます。
2. DX推進と全員マネジメントによる業務効率化
管理職を雑務から解放し、本来注力すべきコア業務に集中させる環境づくりも急務です。有効な手段は、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進です。
以下のようなITツールを活用すれば、多くの定型業務を効率化できます。
| DXツール・アプローチ | 管理職の負担軽減への貢献 |
|---|---|
| クラウド型勤怠管理システム | 打刻や残業時間の自動集計、法改正への自動対応により、労務管理の手間を大幅に削減します。 |
| タスク・プロジェクト管理ツール | チーム内のタスクを可視化し、進捗管理を効率化します。部下への権限委譲もスムーズになります。 |
| パフォーマンス管理システム | 評価プロセスの効率化や、客観的データに基づくフィードバックを支援し、評価面談の質を高めます。 |
さらに、「マネジメントは管理職だけの仕事」といった固定観念を捨て、「全員マネジメントをする」といった文化の醸成も重要です。例えば、チームミーティングの議事進行をメンバーの持ち回りにする、新人のOJTを若手社員に任せるなど、マネジメント業務をチーム全体で分担すれば、管理職の負担を分散できます。
3. 管理職を孤立させない支援体制の構築
管理職を一人で悩ませず、組織として支える体制の構築も不可欠です。具体的には、以下のような支援策が挙げられます。
| 実践的なマネジメント研修 | 新任時だけでなく、定期的にフォローアップ研修を実施し、コーチングやフィードバック、ハラスメント対応など、時代に合ったスキルを学び続けられる機会を提供します。 |
| メンター制度・コーチングの導入 | 経験豊富な先輩管理職や外部の専門家が、個別の悩みに寄り添い、成長をサポートする仕組みを整えます。 |
| 相談窓口の設置 | 管理職が抱えるストレスや人間関係の悩みを、守秘義務が守られた環境で気軽に相談できる窓口を設置し、心理的安全性を確保します。 |
【個人編】現役管理職が心を軽くする3つのアクション
組織変革は企業にとって必要不可欠ですが、管理職である個人でも、罰ゲーム化を避けるためのアクションを行えれば、心理的負担を軽減できます。
以下の表のように、現役の管理職自身が、課題別に少しでも心を軽くするために実践できるアクションを行うことも重要です。
| 課題 | 具体的なアクション |
|---|---|
| すべて自分で抱え込んでしまう | 「完璧な上司」を諦め、任せる勇気を持つ – 部下の失敗を恐れず、仕事を任せてみる。 – 部下の成長機会を創出すれば、将来の自分の負担を減らすことにつながると考える。 |
| 上司と部下の板挟みで疲弊する | 上司・経営層との期待値をすり合わせる – 定期的に「何をどこまで期待されているか」を確認する。 – できないことは「できない」と伝え、必要なリソース(人員、予算など)を具体的に要求する。 |
| 孤独を感じ、相談相手がいない | 孤立を防ぐ横のつながりを作る – 社内の同じ立場の管理職とランチに行くなど、意図的に雑談の機会を作る。 – 社外の勉強会やコミュニティに参加し、利害関係のない相談相手を見つける。 |
【女性管理職向け】特有の悩みと罰ゲーム化しないための乗り越え方

特に女性管理職は、前の章まで解説してきた課題に加えて、特有の困難に直面するケースがあります。背景と、乗り越えるためのヒントを以下の表にまとめました。
下記の課題は女性だけの問題ではなく、多様な人材が活躍できる組織づくりのために、すべての人が理解すべき重要な視点です。
| 女性管理職が直面しやすい特有の課題 | 個人としてできること | 組織(企業)がすべき支援 |
|---|---|---|
| ライフイベントとの両立 出産・育児・介護などにより、男性と同じように長時間働くことが難しい。 | ・一人で抱え込まず、パートナーや同僚、企業に協力を求める。 ・時間内に成果を出す工夫を凝らす。 | ・時短勤務やテレワークなど、柔軟な働き方を制度化する。 ・育児や介護と両立しながら活躍するロールモデルを提示する。 |
| ロールモデルの不在 身近に目標となる女性管理職がおらず、キャリアパスを描きにくい。 | ・社外のメンターやコミュニティを探す。 ・自分自身が後輩のロールモデルになる意識を持つ。 | ・女性管理職同士のネットワーク構築を支援する。 ・計画的な育成プログラムを策定する。 |
| アンコンシャスバイアス(無意識の偏見) 「女性は感情的」「重要な仕事は男性に」といった無意識の偏見にさらされることがある。 | ・成果を客観的なデータで示し、論理的に説明する。 ・信頼できる上司や同僚にサポーターになってもらう。 | ・全社員を対象としたアンコンシャスバイアス研修を実施する。 ・評価や昇進の基準を明確化し、透明性を確保する。 |
まとめ:管理職昇進を「罰ゲーム化」しないための組織変革が重要

本記事では、管理職が「罰ゲーム化」してしまう構造的な要因と、解決策を多角的に解説しました。管理職の罰ゲーム化の問題が個人の能力や意欲のせいではなく、組織の制度や文化に根差した構造的な課題であるとの認識が重要です。
プレイングマネージャーの限界、責任と裁量権のアンバランス、そして日本特有の組織構造といった課題から目をそらさず、企業全体で構造改革に取り組むことが、罰ゲーム化を食い止める唯一の道です。役割の明確化、DXによる業務効率化、そして管理職を孤立させない手厚い支援体制を構築すれば、管理職は本来のやりがいを取り戻せます。
管理職は「罰ゲーム」ではなく、チームを育て、事業を成長させ、組織に変革をもたらす、本来は非常に創造的でやりがいのある役割です。すべての管理職が誇りを持って活躍できる組織を目指し、今日からできる一歩を踏み出しましょう。
まずは自社の現状を分析し、どこから着手すべきかを見極めることから始めてみましょう。
チェンジウェーブグループでは、管理職不足やカルチャー変革の問題に関して、以下の3領域を中核としたマネジメント変革プログラムや研修をご提供しています。
- アンコンシャス・バイアス測定・組織診断:無意識の思い込みを可視化し、適切な評価・育成へ
- 多様性マネジメント・リーダーシップ:多様な個を活かすリーダーシップの実践
- マネジメントの基礎と実践:部下の自律性を引き出し、チーム全体で成果を上げる
自社だけでの取り組みに不安がある場合には、ぜひお気軽にお問い合わせください。
監修者
Designing Your Life ジャパン 認定講師|静岡市男女共同参画審議会委員(2017~2019)
鈴木 富貴(すずき ふき)
所属:株式会社チェンジウェーブグループ 執行役員
経歴:静岡放送株式会社で報道記者・ディレクターとして勤務後、渡米。
ニューヨークの生活、教育をテーマにコンテンツ作成を行う。
帰国後はキャリア・ジャーナリストとして働き方改革、ダイバーシティ経営企業の取材・執筆を開始。社外メンタープログラムの企画・講師も務めた。
株式会社チェンジウェーブ参画後は、大手企業の組織変革、ダイバーシティ推進のアドバイザリー、人材開発に携わるほか、アンコンシャス・バイアスに関する講演、研修、商品開発や異業種プラットフォームの企画・講師を担当。