ハラスメント対策完全ガイド|判断基準と実践方法・法改正への対応

ハラスメント対策は、2026年10月の法改正でカスタマーハラスメント対策や求職者への性的嫌がらせ防止措置が新たに義務化され、企業に求められる対応範囲がさらに広がります。「法的に何をすべきか整理できていない」「相談窓口を設けたが形骸化している」と感じている人事・コンプライアンス担当者も少なくないのではないでしょうか。

本記事では、ハラスメントの定義から法規制の全体像、多様化する類型の判断基準、企業で実践されている具体的な対策まで網羅的に解説します。自社の取り組みを点検し、実効性ある職場環境づくりに向けた施策立案にお役立てください。

ハラスメント対策義務化の全体像

近年、働く人の価値観が多様化し、個人の尊厳を守る意識が高まっています。こうした社会の変化を背景に、誰もが安心して働ける環境を整備するため、国は法改正を進め、企業にハラスメント対策を義務付けました。

まずは現行の法的枠組みと、2026年10月から施行される最新の義務を整理します。

ハラスメントの定義

ハラスメントとは、相手の意に反する言動や行為により、相手の尊厳を傷つけたり、就業環境を害したりする行為の総称です。注意指導や業務上の指示との区別が問題になる場面も多く、行為者の意図よりも、受け手が置かれた状況や言動の客観的な影響から判断するのが基本です。

なお、ハラスメントと混同されやすい概念として不利益取扱いがあります。不利益取扱いとは、産前産後休業の取得や育児・介護休業の申出などを理由として、解雇・降格・減給といった労働条件上の不利益を与える行為のことです。

ハラスメントが言動そのものを指すのに対し、不利益取扱いはその結果に着目する点が異なります。両者は密接に関連する場合があり、マタハラなどでは一つの事案が両方に該当するケースもあります。

ハラスメントに関する法規制

企業が対応すべきハラスメントは、複数の法律で防止措置が定められています。

令和元年(2019年)6月に公布された改正労働施策総合推進法(通称パワーハラスメント防止法)では、パワーハラスメント対策が事業主に義務化されました(2020年6月1日施行、中小企業は2022年4月1日から義務化)。また、男女雇用機会均等法や育児・介護休業法においても、以下のようなハラスメント対策措置義務が定められています。

対象ハラスメント関連法規企業の主な義務
パワーハラスメント改正労働施策総合推進法
(通称:パワーハラスメント防止法)
1. 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
2. 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
3. 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
4. その他併せて講ずべき措置(プライバシー保護、不利益取扱いの禁止等)
セクシュアルハラスメント男女雇用機会均等法上記と同様の措置義務(業種、規模を問わずすべての事業主に適用)
妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント
(マタハラ・パタハラ・ケアハラ)
男女雇用機会均等法
育児・介護休業法
上記と同様の措置義務(業種、規模を問わずすべての事業主に適用)

参考:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために

2026年10月から義務化されるハラスメント対策

2025年6月11日の労働施策総合推進法改正により、2026年(令和8年)10月1日から、新たにカスタマーハラスメント(カスハラ)対策および求職者・就職活動中の学生(インターンシップ参加者を含む)に対するセクシュアルハラスメント対策が、事業主の雇用管理上の義務とされました。

事業主は以下の措置を講じる必要があります。

  • 方針の明確化・周知
  • 相談体制の整備
  • ハラスメント発生時の迅速な対応
  • 対応の実効性を確保するために必要な措置

参考:厚生労働省「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!

多様化するハラスメントの種類と判断基準

一口にハラスメントと言っても、その種類は多岐にわたります。本章では、法律で防止措置が義務付けられているものから、近年社会問題化している新型ハラスメントの具体的な種類、グレーゾーンにおける判断基準を解説します。

①法的に対策が必要なハラスメント

法律に基づく防止措置義務が生じるハラスメントは、以下の4種類です。いずれも対策の優先度が高く、放置した場合には企業が直接的な法的責任を問われる可能性があります。

参考:厚生労働省「職場におけるハラスメント防止対策について

パワーハラスメント(パワハラ)

パワーハラスメント(パワハラ)の定義は、以下の3つの要素をすべて満たすものです。

  1. 優越的な関係を背景とした言動
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  3. 労働者の就業環境が害されるもの

厚生労働省は、パワハラの典型例として以下の6類型を示しています。

パワハラの6類型具体例
身体的な攻撃殴る、蹴る、物を投げつける
精神的な攻撃人格を否定する暴言、脅迫、大勢の前での厳しい叱責
人間関係からの切り離し無視、仲間外れ、意図的に情報を与えない
過大な要求遂行不可能なノルマの強制、業務と無関係な私用の強制
過小な要求能力に見合わない単純作業だけをさせる、仕事を与えない
個の侵害私生活に過度に立ち入る、個人情報を本人の許可なく暴露する

指導・叱責との境界線がグレーゾーンとして問題になる傾向にありますが、主な判断基準は、業務上の必要性があるか、言動の手段・態様が相当かどうかです。例えば、ミスへの注意そのものは適正指導ですが、大人数の前での長時間の叱責や人格否定を含む発言は、業務上の必要性があっても態様として相当性を欠き、パワハラに該当する可能性があります。

セクシュアルハラスメント(セクハラ)

セクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、職場における性的な言動によって、労働者が不利益を受けたり、就業環境が不快になったりすることを指します。判断の基準はあくまで相手が不快に感じたかどうかであり、行為者の意図は問われません。

セクハラは以下の2類型に分けられます。

セクハラの2類型説明
対価型性的な要求を拒否したことを理由に、解雇や降格などの不利益を与えること。
環境型性的な言動(性的な冗談や身体接触など)により、職場の環境を不快なものにすること。

行為者には上司・同僚に限らず、取引先・顧客も含まれ、男女問わず被害者・加害者になり得ます。

グレーゾーンとして問題になりやすいのが、外見へのコメントや性別役割に関する発言です。褒めたつもりであっても受け手が不快に感じ、就業環境が害された客観的な状況があれば、セクハラに該当する可能性がある点に留意しましょう。

妊娠・出産・育児介護に関するハラスメント(マタハラなど)

妊娠・出産・育児・介護に関するハラスメント(マタハラなど)とは、妊娠・出産や育児・介護休業などの制度利用を理由とした、嫌がらせや不利益な取扱いを指します。制度の利用への嫌がらせと、状態への嫌がらせの2種類があります。

【具体例】

  • 「迷惑だ」「辞めたらどうか」といった発言
  • 育休取得を理由とした降格や不当な配置転換
  • 制度利用を阻害するような言動

女性労働者に対するマタニティハラスメント(マタハラ)だけでなく、男性労働者の育休取得に対するパタニティハラスメント(パタハラ)や、家族の介護を行う労働者へのケアハラスメント(ケアハラ)も対象です。

業務上の配置変更が合理的な配慮か、不利益取扱いかの境界線が、グレーゾーンとして問題になりがちですが、判断の基準は本人の意思確認と丁寧な説明が十分に行われたかどうかです。

カスタマーハラスメント(カスハラ)

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客・取引先・施設利用者から、従業員に対して行われる理不尽な要求や迷惑行為です。単なるクレームとの違いは、要求の妥当性に照らして、手段・態様が社会通念上不相当かどうかです。

【具体例】

  • 土下座の強要
  • 長時間にわたるクレーム電話
  • 従業員個人への誹謗中傷やSNSでの攻撃
  • 欠陥のない商品の交換強要
  • 物を投げる・唾を吐くといった身体的攻撃

企業は、自社の従業員をカスハラから守る義務(安全配慮義務)を負っています。顧客の指摘は正当か、そのうえで手段が過剰かを切り分けることがポイントです。

参考:政府広報オンライン「カスハラとは?法改正により義務化されるカスハラ対策の内容やカスハラ加害者とならないためのポイントをご紹介

②近年増加中の新型ハラスメント

社会や働き方の変化に伴い、新しいタイプのハラスメントも問題となっています。
法的な防止措置義務の対象ではないものの、放置すれば企業の安全配慮義務違反を問われたり、企業イメージの悪化につながったりすることにもなりかねません。

モラルハラスメント(モラハラ)

モラルハラスメントとは、言葉や態度、無視などの精神的な暴力によって相手を傷つけ、支配・従属関係を生み出す行為です。身体的な攻撃を伴わないため外見上わかりにくく、被害者が自分に原因があると捉え、自己否定に陥りやすいことが特徴です。

【具体例】

  • ため息などで不快感を示す
  • 嫌みや侮蔑的な発言を繰り返す
  • 陰口を言う、悪い噂を流す
  • 特定の人物だけ挨拶を返さない
  • 必要な情報を意図的に共有しない

上下関係に関わらず、同僚間・部下から上司への方向でも生じる点がパワハラと異なります。

グレーゾーンとして問題になりやすいのが、行き過ぎた批判や無視・冷遇です。一度の言動では判断しにくく、継続性・反復性があるかどうか、相手がどれだけ精神的苦痛を受けているかが判断軸として挙げられます。

リモートハラスメント(リモハラ)

リモートハラスメントとは、オンライン環境で行われるハラスメントの総称です。
画面越しであるため、対面よりもハラスメントであるとの認識が薄れやすい傾向があります。

  • 業務時間外に頻繁に連絡する
  • オンライン会議で特定の人物だけを無視する
  • Webカメラの常時接続を強要し、プライベートな空間を監視する
  • 自宅のプライベート(部屋の様子・家族構成・生活用品など)について詮索する

相手の状況が見えにくいオンライン環境では、配慮が欠けた言動が意図せずハラスメントに発展する可能性があります。コミュニケーションのルールを組織全体で共有することが不可欠です。

逆パワーハラスメント(逆ハラ)

逆パワーハラスメントとは、部下から上司に対して行われるハラスメントです。特に、経験の浅い管理職がターゲットになりやすい傾向があります。

  • 集団での圧力
  • SNSでの誹謗中傷
  • 業務上の指示を無視・拒否する行為

部下が結託して管理職の適正な指導・注意をパワハラであると主張し、聞き入れないケースも見られます。逆ハラは被害者である上司が相談しにくく、潜在化しやすいことが課題です。

ハラスメントが発生する要因と背景

ハラスメントは個人の意識と、組織全体の風土や環境の問題が複雑に絡み合って起こります。根本的な予防のためには、双方の要因に多角的に働きかける施策が不可欠です。

個人の要因

個人の要因としては、感情コントロールの難しさ、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)、自己中心的な価値観、コミュニケーションスキルの偏りなどが挙げられます。

【具体例】

  • 価値観の押し付け(「自分が若い頃はこうだった」)
  • 叱ることが教育といった、旧来の指導スタイルの踏襲
  • 冗談の範囲という認識のずれ
  • コミュニケーション能力の不足
  • ストレスによる視野の狭窄
  • アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)

ハラスメントの加害者には、自身の言動が相手を傷つけているという自覚がないケースが少なくありません。些細な認識のずれがセクハラやモラハラを招きがちです。

組織的背景

ハラスメントが発生・継続しやすい組織には共通点があります。主な要因は以下のとおりです。

①過度な業績プレッシャー

余裕のない職場では、上司が部下への指導において感情的になりやすく、言動がエスカレートする傾向にあります。

  • 会社から課された目標が高すぎる
  • ミスが許されない社内風土
  • 急な業務量増加、または人員減少

②上意下達の文化・同調圧力

上司の言動を誰も指摘・修正できない組織では、ハラスメントが常態化しがちです。場の空気を壊したくないなどの同調圧力が、周囲の沈黙を生み、被害を長期化させます。職場環境が閉鎖的で、本社や本部が実態を知らないケースはさらに深刻です。

③ハラスメントへの理解・感度の低さ

世代間・個人間で許容できる言動の基準が異なるにもかかわらず、差異を認識しないままコミュニケーションを取り続けると、意図せずハラスメントを引き起こしかねません。管理職のハラスメントリテラシーが低い組織では、発生リスクが高まります。

④相談しにくい組織風土

相談窓口を設置していても、「相談したら評価に影響する」「上司に筒抜けになる」といった不安があると、被害者は声を上げられません。心理的安全性が低い職場ほど、ハラスメントが潜在化・長期化する傾向にあります。

組織的背景に起因するハラスメントは、個人の啓発だけでは解消できません。制度設計と組織風土の両面からアプローチすることが求められます。

ハラスメント対策を怠ると発生する3つの経営リスク

ハラスメント対策は、法的義務を果たすためだけでなく、企業の持続的な成長を守るためにも不可欠です。対策を怠った場合に生じる経営リスクを3つの観点から整理します。

人材の流出

ハラスメントが横行する職場では、従業員の心身の健康が損なわれ、仕事へのモチベーションが著しく低下します。被害者が離職を余儀なくされるだけでなく、目撃した従業員も組織で自分が守られないと感じ、優秀な人材から職場を離れていく悪循環に陥りかねません。

採用コストが高騰するなか、優秀な戦力の離脱が中長期的な競争力の低下に直結します。

社名公表・社会的信用の失墜

ハラスメント防止措置を怠った場合、行政から指導や勧告を受けることがあります。勧告に従わない場合は企業名が公表される場合があり、社会的信用が大きく傷つくことにもなりかねません。

現代では、SNSを通じて悪評が瞬く間に拡散するため、一度失ったブランドイメージを回復することは極めて困難です。特に、就職活動中の学生や転職希望者は、企業のコンプライアンス姿勢をSNSや口コミサイトで事前に確認する傾向が強まっているため、採用活動への影響は深刻です。

法的責任・訴訟

ハラスメント対策を講じなかった場合、事業主は安全配慮義務違反として損害賠償請求の対象になり得ます。加害者個人だけでなく、企業(使用者)も不法行為責任(民法715条)を問われるケースが少なくありません。

訴訟に発展した場合、弁護士費用・賠償金・業務停止などの直接的損失に加え、レピュテーションリスク(評判低下リスク)も伴います。

ハラスメントが訴訟に発展した事例

実際に訴訟に発展したハラスメント事案を、厚生労働省の裁判例データベースをもとに整理しました。

事案名(分類)概要結論
A保険会社上司(損害賠償)事件(パワハラ・精神的攻撃)上司が部下に「やる気がないなら辞めるべき」「会社にとって損失そのものです」などと記載したメールを、本人と同僚十数名に送信。・侮辱的言辞として不法行為が認定
・損害賠償5万円の支払いを命じる
(東京地判 平16.12.1)
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル事件(マタハラ・不利益取扱い)育児休業から復職した女性管理職(部下37名のチームリーダー)が、部下のいない業務への転換が命じられた。・育児休業を理由とした不利益取扱いと判断
・均等法9条3項・育介法10条違反として220万円の損害賠償を命じる
(東京高裁 令5.4.27)
海遊館事件(セクハラ・言葉による性的言動)管理職の男性従業員2名が、派遣社員・受託会社社員の女性に対し、1年以上にわたり不貞関係の話題、退職を促す侮辱発言、夜の仕事を示唆する言動などを繰り返した。
会社から出勤停止・降格処分を受けた加害者2名は、処分を無効として会社を提訴。
被害者からの抗議や会社からの事前警告がなかったとしても、斟酌すべき事象とはいえず、処分は有効との判決
(最高裁一小 平27.2.26)

A保険会社事件では、パワハラの意図がなくても相当性を欠いた表現は損害賠償の対象となることが示されました。アメリカン・エキスプレス事件では、キャリアに不相応な業務への配置転換そのものが、マタハラや不利益取扱いの認定根拠となり得ることが確認されています。

海遊館事件では、被害者が拒否の意思を表明していなくても、セクハラとして懲戒処分が成立することが示されました。

いずれも、グレーゾーンと判断されていた言動が法的責任につながった事例です。

参考:厚生労働省 あかるい職場応援団「裁判例を見てみよう

ハラスメント対策への取り組み

ハラスメントを未然に防ぐには、ルールの整備だけでは不十分です。知識の周知、心理的安全性の醸成、対応体制の整備の3つを組み合わせた取り組みが求められます。

従業員への周知と知識提供を徹底する

従業員への周知と知識提供を徹底することが、ハラスメント防止の出発点です。法的義務を果たすうえでも、事業主はハラスメント防止方針を明確にし、全従業員に対して周知・啓発を行わなければなりません。

トップメッセージの発信経営トップが自らの言葉で、ハラスメント撲滅への強い意志を表明し、全従業員に周知
就業規則の整備ハラスメントの定義、禁止事項、懲戒処分などを就業規則に明記し、ルールを明確化
継続的な情報発信社内報・イントラネットを活用した継続的な情報発信

組織の心理的安全性を高める

組織の心理的安全性を高めることは、ハラスメントの予防的な対策の一つです。

上司や同僚に気軽に意見を言えない閉鎖的な職場環境は、ハラスメントの温床になるリスクを内包しています。心理的安全性を高めるためには、従業員の声を拾い上げる仕組みを構築することが効果的です。

  • 1on1ミーティングの定期開催
  • チームでの意見交換の場の確保
  • 意見箱の設置
  • 管理職のヒアリング力育成研修の実施

併せて、特定の従業員が孤立していないか、遅刻・欠勤・体調不良が続いていないか、チームの雰囲気が急変していないかといった、予兆を見逃さない視点を養うことも大切です。

適切に対応するための体制整備

実際に問題が起こった際に、適切に対応できる仕組みを社内に構築しておくことも重要です。

相談窓口の設置社内外に、従業員が安心して相談できる窓口を設置し、広く周知(プライバシー保護が前提)
研修の実施全従業員を対象に、ハラスメントに関する正しい知識を学ぶ研修を定期的に実施(管理職は、指導とパワハラの境界線についても学習)
実態調査の実施匿名のアンケートなどを定期的に行い、職場の実態を把握し、潜在的なリスクの早期発見に努める
発生時対応フローの策定相談受付から事実確認、当事者への対応、再発防止策までの一連の流れをあらかじめ明確にしておく

企業で実践されているハラスメント対策の具体例

他社の先進的な取り組みを知ることで、自社の対策を考えるヒントを得られます。本章では、多くの企業で実践され、効果を上げている具体的な施策を紹介します。

アンケートや定期的サーベイで現状と予兆を把握

ハラスメント対策に成功している多くの企業では、全従業員を対象とした匿名の意識調査を定期的に実施しています(年1~2回程度)。調査結果が経営層に報告され、具体的な職場環境の改善策につなげていることも特徴的です。

ハラスメントの有無だけでなく、相談しやすい雰囲気か、上司とのコミュニケーションは円滑か、といった項目を設けることで、問題の予兆を早期に把握しています。職場のストレス状況や人間関係の不満を数値化・可視化することで、潜在的なリスクを早期に発見できることがメリットです。

相談窓口を設置し、プライバシー保護を徹底

相談窓口を設置している企業では、プライバシー保護を徹底するだけでなく、窓口の実効性を高めるために、相談しやすい環境設計に留意しています。

  • 相談者・行為者のプライバシー保護の徹底と周知
  • 相談したことを理由とした不利益取扱いの禁止の明示
  • 担当者の守秘義務の明確化と対応スキルの習得
  • 相談から対応完了までの進捗を相談者に定期的に報告

社内の相談窓口だけでなく、弁護士や専門のカウンセラーなどに委託して外部窓口を併設する企業も少なくありません。従業員にとっては社内窓口よりも外部のほうが、相談しやすい場合もあることを考慮した環境設計といえます。

全社員を対象とした研修を実施

ハラスメント対策(周知義務)の一環として、全従業員を対象とした研修を実施するのも有効です。実務上のグレーゾーンを明確にするために、近年は座学だけでなく、ワークショップなどの実践的な研修を取り入れる企業が増えています。

ケーススタディ職場でありそうな具体的な事例をもとに、何が問題で、どう対応すべきかをグループで討議
対話型ワークショップ管理職と部下が一緒に参加し、理想的なコミュニケーションについて対話することで、相互理解を深める
アンコンシャス・バイアス研修誰もが持つ無意識の偏見に気づき、ハラスメントにつながるリスクを自覚する

発見時の対応マニュアルと対応フローの作成

発見時の対応マニュアルと対応フローの作成は、問題発生時に組織として迅速・適切に動くための基盤です。対策実施企業ではマニュアルに「相談受付→事実確認→当事者への対応→再発防止措置→フォローアップ」の流れを明示するとともに、加害者・被害者への関わり方も明文化しています。

対象者内容
被害者安心して話せる環境を確保し、二次被害が生じないよう情報管理を徹底
加害者事実確認のうえで状況に応じた指導・処分・教育的関与を実施

処分の基準や解決策を明示することで、当事者双方の納得感が増し、職場環境の早期回復につながります。

ハラスメント対策を現場で実践する際のポイント

制度・体制を整えた後も、現場での日常的なコミュニケーションのあり方がハラスメントの発生を左右します。管理職・リーダー層が実践すべき具体的な行動習慣を押さえておきましょう。

時代や背景の違いを意識してコミュニケーションを取る

意図せずハラスメントに陥らないために、お互いの時代や背景の違いを意識したコミュニケーションを心がけましょう。

世代間・個人間で前提は異なり、昔は普通だったことが現代では通用しないケースが少なくありません。自分の価値観や経験を前提にするのではなく、相手の価値観を尊重し、背景の違いを理解しようと努める姿勢が良好な人間関係につながります。

指導・注意は相手に気づかせる方法で行う

指導・注意する際には頭ごなしに否定せず、相手に気づかせるスタンスで行いましょう。

  • 事実に基づいて具体的に伝える(「いつも」「どうせ」といった断定表現を避ける)
  • 人格ではなく行動に対し指摘する(「あなたはダメだ」ではなく「この点を改善してほしい」)
  • 1対1の場で、感情が落ち着いている状態で行う
  • 相手が自ら気づき、改善意欲を持てるような問いかけを活用する

相手が「なぜ指摘されたのか」「どう改善すればよいか」を自分で考えられる問いかけ型の指導で、部下の主体性を育てながらパワハラリスクを下げられます。

ハラスメント対策を企業に浸透させるチェンジウェーブのサービス

ハラスメント対策を自社だけで進めることが困難な場合、外部の専門家の力を借りることも有効です。
チェンジウェーブグループは、500社以上の企業変革・DE&I推進を支援してきた知見をもとに、ハラスメント対策を組織風土の変革と一体で推進するサービスを提供しています。

提供サービス内容
組織風土変革と連動したハラスメント対策支援根本的な原因である組織風土の課題分析から改善までをトータルで支援します。
サーベイと改善施策を組み合わせたアプローチ従業員意識調査の設計・実施から、結果分析、具体的なアクションプランの策定までをサポートします。
管理職向け研修・リーダー育成プログラムハラスメント防止だけでなく、部下の育成やチームビルディングにつながるマネジメントスキルを体系的に学べます。
自社に合わせたカスタマイズ支援就業規則の改定や相談窓口の立ち上げなど、自社の実情に合わせた具体的な制度設計を支援します。

ハラスメント対策に関するよくある質問(Q&A)

現場で対策を進める際に人事担当者から多く寄せられる疑問に回答します。

Q. 対策でコミュニケーションがギクシャクしませんか?

A. ハラスメント対策の正しい理解が浸透すれば、コミュニケーションはむしろ改善される傾向にあります。
対策の目的は、誰もが安心して働ける環境をつくることであって、特定の者を問い質して萎縮させることではありません。管理職がハラスメントの定義と適切な指導の違いを研修で学習すれば、自信を持って指導や対話に臨めます。

Q. 相談窓口は社内と社外、どちらが良いですか?

A. 可能であれば、社内・社外の両方を設置することが望ましいです。社内・社外それぞれにメリットとデメリットがあるため、適宜組み合わせて補完するのが理想です。

窓口の種類メリットデメリット
社内窓口・社内の実情に詳しく、迅速な対応が期待できる
・コストを抑えられる
・社内に知られたくない、評価に響きそうといった抵抗感を抱きやすい
・担当者の公平性や専門性が問われる
社外窓口・高い専門性と中立性が担保される
・従業員が安心して相談しやすい
・社内の実情把握に時間がかかることがある
・外部委託コストが発生する

Q. 加害者にならないために個人が気をつけることは?

A. 大切なのは「自分の言動が相手にどう受け取られるか」を常に意識することです。ハラスメントの多くは、行為者に悪意がなく発生しています。以下に留意したコミュニケーションを心がけましょう。

  • 相手が不快な様子なら、話題や言い方を変える
  • 性別・年齢・家族構成に関する発言を業務上不必要な場面で持ち出さない
  • 指導・注意は事実に基づき、冷静な状況で1対1で行う
  • 自分の言動を「バイアスかもしれない」と立ち止まって振り返る習慣をつける

まとめ:ハラスメント対策は組織風土変革が成功のカギ

ハラスメント対策は、法令遵守のための施策にとどまらず、企業の持続的な成長と人材確保を支える経営課題です。2026年10月にはカスタマーハラスメント対策・求職者へのセクシュアルハラスメント対策が新たに義務化され、求められる対応範囲はさらに広がります。

相談窓口の設置や研修の実施といった制度整備だけでは十分な対策とはいえません。従業員が安心して声を上げられる心理的安全性の高い職場文化を根付かせて初めて、ハラスメント対策が機能します。

まずは自社の現状を正確に把握し、組織風土の変革を視野に入れた継続的な施策設計から着手しましょう。

鈴木 富貴(すずき ふき)

監修者

Designing Your Life ジャパン 認定講師|静岡市男女共同参画審議会委員(2017~2019)

鈴木 富貴(すずき ふき)

経歴:静岡放送株式会社で報道記者・ディレクターとして勤務後、渡米。

ニューヨークの生活、教育をテーマにコンテンツ作成を行う。

帰国後はキャリア・ジャーナリストとして働き方改革、ダイバーシティ経営企業の取材・執筆を開始。社外メンタープログラムの企画・講師も務めた。

株式会社チェンジウェーブ参画後は、大手企業の組織変革、ダイバーシティ推進のアドバイザリー、人材開発に携わるほか、アンコンシャス・バイアスに関する講演、研修、商品開発や異業種プラットフォームの企画・講師を担当。

カテゴリ別で見る

プロジェクト別で見る

Download

資料ダウンロード

チェンジウェーブグループの各サービスの資料など
こちらからダウンロードすることができます。

各サービス資料の
ダウンロードはこちら

資料ダウンロード

Contact

お問い合わせ

チェンジウェーブグループのサービスについて、
お気軽にご連絡ください。

サービスに関する
お問い合わせはこちら

お問い合わせ