女性管理職が少ない理由とは?データと構造から解き明かす日本の現状と企業の打ち手

「女性管理職を増やしたいが、なかなか定着しない」
「そもそも、管理職になりたい女性社員が少ない」
このような課題を抱える経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。
日本における女性管理職の比率は、国際的に見ても依然として低い水準にあります。この問題は、単に女性の意欲が低いといった単純な理由ではなく、社会や企業組織が抱える根深い構造に原因が潜んでいるのです。
本記事では、女性管理職が少ない背景にある複雑な要因をデータと構造から丁寧に解き明かします。そのうえで、企業が明日から取り組める具体的な解決策までをわかりやすく解説します。
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【データで見る】日本における女性管理職の厳しい現状

まず、客観的なデータから日本の女性管理職が置かれている状況を把握することが重要です。国内外のデータを見比べることで、その深刻さが明確化します。
日本の女性管理職比率の現状値
日本国内の調査結果は、女性管理職比率の伸び悩みを示しています。
厚生労働省の令和5年度雇用均等基本調査によると、課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は12.7%でした。役職が上がるほど、この割合は低くなる傾向にあります。
これは、女性がキャリアの段階を登る過程で、なにかしらの障壁に直面していることを示唆しています。

国際比較で見る日本の立ち位置と政府目標
日本の女性管理職比率を国際的な視点で見ると、その低さはさらに際立ちます。

内閣府男女共同参画局のデータによれば、諸外国では30%を超えるのが一般的となっており、フィリピンやアメリカ、スウェーデンなど多くの国で、40%を超えているのが現状です。このような状況を受け、日本政府は成長戦略の一つとして女性活躍推進を掲げています。
具体的には、2030年までに指導的地位に占める女性の割合を30%程度にするという目標を設定しました。しかし、現状の数値との間には大きな隔たりがあり、目標達成には抜本的な対策が不可欠です。
参考:男女共同参画推進本部「女性活躍・男女共同参画の重点方針2023(女性版骨太の方針2023)」
参考:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」
女性管理職が少ない理由|構造・組織・個人の側面から分析

女性管理職が少ない理由は、決して一つではありません。個人の意識だけでなく、社会や企業の構造、組織文化など、複数の要因が複雑に絡み合っています。
本章では、問題を構造・組織・個人の三つの側面に分けて分析します。
【構造的要因】キャリアを阻む見えない壁と制度の問題
個人の努力だけでは乗り越えがたい、社会や企業の仕組みに起因する問題です。これらの要因は、女性のキャリア形成に直接的な影響を及ぼします。
昇進を阻むガラスの天井とキャリア初期の壊れたはしご
女性の昇進を阻む障壁は、キャリアのさまざまな段階に存在します。
| 障害 | 詳細 |
|---|---|
| ガラスの天井 | 能力や実績があっても、性別などを理由に一定以上の役職に昇進できない見えない障壁のことです。役員クラスへの昇進候補から女性が外されるといったケースが該当します。 |
| 壊れたはしご | キャリアの初期段階から、女性が管理職への道筋となる経験を積む機会を得にくい状況を指します。重要なプロジェクトから外されるなど、昇進へのハシゴの最初の段が壊れている状態です。 |
長時間労働を前提とした働き方と両立の困難さ
日本の多くの企業、特に管理職の働き方は、長時間労働を前提としています。この文化は、育児や介護など家庭での役割を担うことが多い女性にとって、非常に高いハードルです。
企業側が、出張や責任の重い業務から女性を外すことも少なくありません。しかし、この配慮は、結果的に女性から成長機会を奪うことにつながります。
責任ある仕事を経験できないため、管理職に必要なスキルや実績を積めません。これが、昇進の機会損失に直結してしまうのです。
年功序列・終身雇用を前提とした旧来型の人事評価制度
多くの日本企業で根強く残る人事制度も、女性の昇進を妨げる一因です。これらの制度は、キャリアの中断を想定していないものが多く見受けられます。
| 制度的課題 | 女性への影響 |
|---|---|
| 年功序列 | 出産や育児による休業・時短勤務が、勤続年数評価で不利に働くことがある。 |
| 終身雇用 | キャリアの中断からの復帰や再就職で、昇進コースから外れやすい。 |
| 曖昧な評価基準 | 残業時間や転勤経験など、時間的制約のある女性には達成が難しい項目が評価されやすい。 |
【組織的要因】企業文化に根付く無意識のバイアス
制度だけでなく、組織内に浸透している固定観念や企業文化も大きな障壁となっています。これらは無意識のうちに、女性の評価や機会に影響を与えています。
リーダーは男性というアンコンシャス・バイアス
アンコンシャス・バイアスとは、無意識の思い込みや偏見のことです。性別に関するバイアスは、組織の意思決定に深く影響します。
例えば、以下のような思い込みが、女性の昇進機会を奪っている可能性があります。
- リーダーシップは男性的な資質だ
- 女性は感情的で、管理職には向かない
- 子育て中の女性に、責任の重い仕事は任せられない
- 女性は男性のサポート役が適している
このようなバイアスは、採用面接や人事評価の場で、評価者の判断を無意識に歪めます。その結果、能力のある女性が見過ごされ、昇進候補から外されてしまうのです。
ロールモデルの不在とキャリアパスの描きにくさ
社内に女性管理職が少ないことも、次の女性リーダーの誕生を妨げる要因です。身近に目標となるロールモデルがいないため、若手女性社員は管理職としての自分を具体的にイメージできません。
特に、仕事と家庭を両立させている女性管理職がいない場合、自分には無理だとキャリアを諦めてしまう傾向が強まります。この悪循環を断ち切るためには、企業が意図的にロールモデルを育成し、その存在を可視化していく努力が必要です。
【個人的要因】意欲低下の背景にある割に合わないという現実
「女性は管理職になりたがらない」という声も聞かれます。しかし、その背景には、これまで見てきた構造的・組織的要因が大きく影響しています。
多くの女性は、管理職というポジションの現状を見て、合理的に「なりたくない」と判断しているのです。
- 過剰な負担:長時間労働や重い責任に対して、給与や権限が見合っていない
- 両立の困難さ:仕事と家庭の両立が極めて難しいことを、先輩社員の姿から学んでいる
- 孤立への不安:男性中心の管理職層の中で、相談相手もなく孤立するのではないかと懸念する
- 評価への不信感:アンコンシャス・バイアスにより、正当な評価を受けられないと感じている
つまり、女性の昇進意欲の低下は、個人の資質の問題ではなく、組織が提示するキャリアパスに魅力がないことの裏返しと言えます。
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女性管理職の増加で企業が享受するメリット

女性管理職を増やすことは、社会的要請に応えるだけでなく、企業経営にプラスの効果をもたらします。それは、企業の競争力強化と持続的成長に直結する、重要な経営戦略です。
メリット1:多様な視点によるイノベーションの創出
性別を含む多様なバックグラウンドを持つ人材が意思決定層に加わることで、組織の視野は格段に広がります。画一的な組織では見過ごされがちな、新たな顧客ニーズや市場の可能性を発見しやすくなります。
これにより、既存事業の改善や、革新的な商品・サービスの開発につながるのです。
| 効果 | 具体例 |
|---|---|
| 意思決定の質向上 | ・均質性の高い集団にありがちな集団浅慮(グループシンク:十分な検討をせずに、集団で非合理的な意思決定をしてしまうこと)を防止する。 ・リスク管理能力が向上し、より多角的な視点から慎重な判断が可能になる。 |
| イノベーション促進 | ・女性消費者の視点を活かした商品開発やマーケティングが可能になる。 ・異なる価値観のぶつかり合いから、新しいアイデアが生まれやすくなる。 |
メリット2:優秀な人材の確保と定着率の向上
少子高齢化により労働人口の減少が進む日本では、人材確保は最重要の経営課題です。女性が活躍できる環境を整えることは、優秀な女性人材にとって大きな魅力です。
キャリアアップの道筋が明確な企業は、採用市場において強い競争力を持ちます。また、女性管理職の存在は、若手女性社員のキャリア目標となり、エンゲージメントと定着率の向上にも貢献します。
誰もが公正に評価され、活躍できる組織文化は、性別を問わず全社員のモチベーションを高めるのです。
メリット3:企業イメージとブランド価値の向上
女性活躍推進に積極的に取り組む企業は、社会的に高い評価を受けます。これは、顧客や取引先、そして投資家からの信頼獲得に直結します。
近年、企業の非財務情報を重視するESG投資が拡大しており、ダイバーシティ&インクルージョンへの取り組みは、企業価値を測る重要な指標となっている状況です。
メリット4:組織全体の生産性向上
女性管理職を増やす過程で、多くの企業は働き方の見直しに着手します。長時間労働の是正や、柔軟な働き方の導入、公正な評価制度の構築などが代表例です。
これらの改革は、特定の社員だけでなく、全社員のワークライフバランスを改善します。
結果として、社員一人ひとりの満足度とエンゲージメントが高まります。そして、それは組織全体の生産性向上という、大きな果実となって企業にもたらされるのです。
女性管理職を増やすための具体的アクションプラン

女性管理職を増やすためには、課題を多角的に捉え、計画的かつ継続的に取り組むことが不可欠です。本章では、「意識改革」「制度・環境改革」「育成・機会提供」の三つの柱で具体的な施策を提案します。
意識改革:無意識の偏見を取り除く
すべての施策の土台となるのが、経営層から一般社員までの意識改革です。特に、意思決定権を持つ管理職層の意識が変わらなければ、制度も形骸化してしまいます。
| 具体策 | 詳細 |
|---|---|
| アンコンシャス・バイアス研修の実施 | 全社員、特に管理職を対象に、無意識の偏見が人事評価や業務分担に与える影響を学んでもらいます。具体的なケーススタディを用いて、自分自身のバイアスに気づき、行動を変えるきっかけを作ります。 |
| 多様な管理職像の提示 | 社内外で活躍する女性管理職の事例を積極的に共有します。インタビュー記事や社内イベントを通じて、管理職=男性という固定観念を払拭します。 |
| トップメッセージの発信 | 経営トップが、女性活躍推進の重要性とその決意を、繰り返し社内に向けて発信します。なぜダイバーシティが必要なのかを、経営戦略と結びつけて語ることが重要です。 |
制度・環境改革:誰もが働きやすい環境へ
意欲ある女性がキャリアを諦めずに済むよう、働き方の柔軟性を高め、公正な評価制度を構築します。
柔軟な働き方の標準化と男性育休の取得促進
時間や場所の制約を取り払うことが、両立支援の鍵を握ります。
| 制度 | 導入のポイント |
|---|---|
| フレックスタイム | コアタイムを短縮または廃止し、より柔軟な働き方を可能にする。 |
| 時短勤務制度 | 利用対象を広げ、昇進・昇格への影響を最小限に抑える運用ルールを設ける。 |
さらに、男性の育児休業取得を強力に推進することも不可欠です。男性が育児を分担することが当たり前の文化を醸成し、育児は女性の仕事という固定観念を社会全体で変えていく必要があります。
長時間労働からの脱却:管理職の業務負担軽減とDX化
管理職の魅力そのものを高めることも重要な課題です。長時間労働に依存しない、持続可能な管理職の働き方を実現する必要があります。
- 業務プロセスの見直し:不要な会議の削減、承認プロセスの簡素化など、業務の棚卸しを行う
- DXツールの導入:RPAによる定型業務の自動化やコミュニケーションツールを活用し、業務効率を向上させる
- 権限委譲の推進:管理職の業務を部下に適切に委譲し、管理職が本来注力すべき業務に集中できる環境を整える
育成・機会提供:未来のリーダーを意図的に育てる
女性管理職の候補者を計画的に育成し、成長に必要な機会を戦略的に提供します。待つのではなく、企業側から積極的に働きかける姿勢が求められます。
リーダーシップ研修と挑戦的な業務のアサイン
女性社員を対象とした、キャリア初期からの育成プログラムが有効です。
| 具体策 | 詳細 |
|---|---|
| 候補者の早期選抜 | 将来の管理職候補となるポテンシャルのある女性社員を早期に発見します。 |
| 体系的な研修 | リーダーシップやマネジメント、財務など、管理職に必要なスキルを体系的に学ぶ機会を提供します。 |
| 意図的なアサインメント | 新規事業の立ち上げや困難なプロジェクトのリーダーなど、修羅場経験となる挑戦的な業務を意図的に任せます。これにより、本人の自信と、周囲からの信頼を醸成します。 |
キャリアを後押しするメンター制度とスポンサーシップ
ロールモデルとのつながりや、経営層からの後押しは、女性のキャリア形成に大きな力となるのです。
| 制度 | 目的と役割 |
|---|---|
| メンター制度 | 相談役:経験豊富な先輩社員(メンター)が、若手社員(メンティ)のキャリア上の悩み相談に乗り、精神的なサポートを行います。 |
| スポンサーシップ | 後援者:経営層や上級管理職(スポンサー)が、特定の女性社員の才能を認め、昇進や重要なポジションへの抜擢を積極的に働きかけます。 |
特に、昇進の意思決定に直接影響力を持つスポンサーの存在は、ガラスの天井を打ち破る上で非常に効果的です。女性管理職の育成について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
【関連記事】
女性管理職の育成ガイド|明日から使える戦略立案と実践ロードマップ
女性管理職を増やすうえで役立つサービス

自社だけで女性活躍推進のノウハウやリソースが不足している場合、外部の専門サービスを活用するのも有効な手段です。企業課題に合わせて、さまざまなサービスが存在します。
女性管理職を増やすうえで役立つサービスとして、弊社チェンジウェーブグループの女性役員・部長輩出プロジェクトが挙げられます。
これは、女性幹部を高確率で輩出するためのポイントをおさえたプログラムです。ターゲットとする年度に、必要な女性幹部人数を着実に引き上げ、経営および関連ステークホルダー全体が腹落ち・協働していくためのプロジェクト設計から実装まで伴走します。
異業種横断のプログラムも提供していますので、女性管理職の育成を自社だけで進めるのは難しいと感じた場合は、チェンジウェーブグループまでお気軽にご相談ください。
【事例】キリングループ全社展開の人事施策になった「なりキリンママ」

営業職女性の変革を推進する「エイカレ2016」で大賞を受賞したキリングループの「なりキリンママ」は、子どものいない社員が1ヶ月間ママになりきり、時間制約のある働き方に挑戦する実証実験プロジェクトです。残業禁止や保育園の送迎、急病による強制帰宅といったリアルな育児制約を想定し、業務の棚卸しやチーム内の相互支援を徹底しました。
この事例では、営業成績を落とさずに労働生産性を大幅に向上させる成果を上げ、2019年には「なりキリンママ・パパ研修」として全社展開の人事施策へと発展しました。多様な働き方への理解浸透や男性の育休取得促進に繋がったほか、参加メンバーが成果を維持しながら柔軟にキャリアを築く好例となっています。
【詳細】
「なりキリンママ」は今、5人が始めた実験は全社展開の人事施策になった
エイカレ卒業生は、今~キリンビバレッジ株式会社 井尻綾夏氏、キリンビール株式会社 加藤ますみ氏、メルシャン株式会社 河野文香氏(エイカレ2016ご参加)
まとめ:自社の女性管理職が少ない理由を知って有効策を講じよう

本記事では、日本の女性管理職が少ない理由を、データに基づきながら構造的・組織的・個人的な側面から多角的に解説しました。そのうえで、企業が取り組むべき具体的なアクションプランを提示しました。
女性管理職が増えない背景には、長時間労働を前提とした働き方、アンコンシャス・バイアス、ロールモデルの企業不足など、根深い課題が横たわっています。これらの課題を解決し、女性管理職を増やすことは、企業の競争力を高め、持続的な成長を実現するために不可欠な経営戦略です。
重要なのは、これらの課題を自分ごととして捉え、自社の状況に合った施策から着実に実行していくことです。
チェンジウェーブでは女性幹部育成対策の最新情報と実践アプローチ等をまとめた「なぜ女性経営層が増えにくいのか/3つの実践アプローチ」を無料配布しています。お気軽にお問い合わせください。
監修者
Designing Your Life ジャパン 認定講師|静岡市男女共同参画審議会委員(2017~2019)
鈴木 富貴(すずき ふき)
所属:株式会社チェンジウェーブグループ 執行役員
経歴:静岡放送株式会社で報道記者・ディレクターとして勤務後、渡米。
ニューヨークの生活、教育をテーマにコンテンツ作成を行う。
帰国後はキャリア・ジャーナリストとして働き方改革、ダイバーシティ経営企業の取材・執筆を開始。社外メンタープログラムの企画・講師も務めた。
株式会社チェンジウェーブ参画後は、大手企業の組織変革、ダイバーシティ推進のアドバイザリー、人材開発に携わるほか、アンコンシャス・バイアスに関する講演、研修、商品開発や異業種プラットフォームの企画・講師を担当。
