女性管理職のロールモデルがいないときに企業ができる施策は?具体例も紹介

貴社には、女性社員が「この人のようになりたい」と目標にできるロールモデルはいますか。多くの企業で女性活躍推進が叫ばれる一方、身近に参考にできる先輩管理職がいないという課題は根強く残っています。

ロールモデルの不在は、女性社員がキャリアの将来像を描きにくくするだけでなく、管理職への意欲低下や離職にもつながります。それは個人の問題にとどまらず、組織の多様性や持続的成長を妨げる要因にもなりかねません。

本記事では、女性管理職のロールモデルがいない現状を多角的に分析します。そのうえで、企業が主体的にロールモデルを見つけて育成し、社内に浸透させていくための具体的な施策を解説します。

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女性管理職におけるロールモデルの考え方

まず、ロールモデルという言葉の捉え方と、その不在がもたらす影響について正しく理解しましょう。完璧な人物像を追い求めるのではなく、自社に合ったロールモデルの考え方を確立することが、効果的な施策の第一歩です。

ロールモデルがいない女性社員が抱える悩み

身近に目標となる女性管理職がいない環境は、キャリアアップを目指す女性社員にとって多くの悩みや不安を生み出します。これらの悩みは、個人のモチベーションだけでなく、組織全体のエンゲージメントにも影響を及ぼします。

悩みのカテゴリ具体的な内容潜在的な影響
キャリアパスの不透明さ・管理職になった後の働き方が想像できない
・どのようなスキルや経験を積めば良いのか不明確
・自分の強みをどう活かせば管理職になれるかわからない
・昇進への意欲減退、キャリア停滞感
・自己投資の方向性を見失う、成長実感の欠如
・自信の喪失、自己肯定感の低下
ワークライフバランスへの不安・仕事と育児、介護などを両立できるか心配
・長時間労働が前提の管理職像しかイメージできない
・ライフイベント後のキャリア継続が困難に感じる
・管理職になることをためらう、キャリアの中断
・健康面への懸念、プライベートの犠牲
・早期離職、優秀な人材の流出
心理的な孤独感・キャリアに関する悩みを相談できる相手がいない
・マイノリティとしてのプレッシャーや疎外感をもつ
・自分の考えや決断に自信が持てない
・ストレスの増大、メンタルヘルスの不調
・組織への帰属意識の低下
・意思決定の遅れ、パフォーマンスの低下

上記の悩みは、女性社員が自身の能力を十分に発揮することを妨げる障壁となり得ます。企業はロールモデル不在の課題を個人の問題として片付けず、組織的な課題として捉え、対策を講じる必要があります。

ロールモデル不足が女性管理職・女性役員の登用を難しくする

ロールモデルの不在は、企業における女性管理職や役員の登用を停滞させる要因の一つです。日本の女性管理職比率は国際的に見ても低い水準にあり、構造的な課題の解決が必要とされています。

実際に、企業が女性の管理職・役員登用を進めるうえでの課題として、社内にロールモデルが少ないことは常に上位に挙げられます。候補者となる女性社員自身が管理職への道を具体的に描けず、昇進に意欲を持ちにくいという悪循環に陥っています。

この状況は組織の意思決定層の多様性を欠き、イノベーションの停滞や市場競争力の低下につながるリスクをはらんでいます。ロールモデルとなる女性管理職を育成し、提示することは、単なる女性支援ではなく、企業の未来を左右する経営戦略の一環と言えます。

参考:PR TIMES「女性の管理職・役員登用、課題は「要件を満たす人が少ない」「女性が目指していない」「女性の数が少ない」「ロールモデルの不在」「アンコンシャスバイアス」」

女性管理職のロールモデルを設定するメリット

企業が意識的にロールモデルを設定し、その存在を社内に浸透させることには、多くのメリットがあります。ここで紹介するメリットは相互に関連し合い、組織全体の活性化につながるものです。

将来の働き方やキャリアの姿を描きやすくなる

具体的なロールモデルの存在は、漠然としていたキャリアパスに具体的なイメージを与えます。「あの人のようになりたい」「あのような働き方なら自分にもできるかもしれない」と感じることで、将来への希望が生まれます。

これにより、女性社員は自身のキャリアプランを主体的に考え、前向きに行動できるようになるのです。

管理職を目指す女性社員の成長を後押しできる

目標が明確になることで、そこに到達するために必要なスキルや経験が何であるかを逆算して洗い出すことができます例えば、ロールモデルが持つ特定のスキル(交渉力、プレゼンテーション能力など)を意識し、自ら学習する意欲が高まるのです。

企業側も、ロールモデルを参考に育成プログラムを設計することで、より効果的に人材育成を進められます。

女性管理職の育成についての詳細は、こちらの記事も併せてご覧ください。

【関連記事】
女性管理職の育成ガイド|明日から使える戦略立案と実践ロードマップ

各社員が強みや課題を冷静に見つめ直しやすくなる

ロールモデルと自分自身を比較することで、自分の強みや今後伸ばすべき点を客観的に分析する機会が生まれます。「自分には何が足りないのか」というネガティブな視点だけでなく、「自分のこの強みは管理職として活かせる」というポジティブな自己発見にもつながります。

自己分析を通じて、一人ひとりが自分らしいリーダーシップの形を模索するきっかけとなるのです。

社内のコミュニケーションが活性化する

ロールモデルとなる管理職と若手社員が交流する機会は、部署や役職を超えた縦横のコミュニケーションを促進します。メンター制度などを通じて、通常業務では得られないような視点やアドバイスを得られます。

このようなつながりは、組織の一体感を醸成し、風通しの良い企業文化を育む土壌となるのです。

女性管理職のロールモデルがいないときに企業ができる施策

「社内に適当なロールモデルがいない」と諦める必要はありません。視点を変えて創造的にアプローチすることで、自社に合ったロールモデルを見つけ出し活用できます。

ロールモデルになり得る人物像を整理して見つける

重要なのは、一人の完璧なロールモデルを探そうとしないことです。多様な価値観を持つ社員それぞれが参考にできるよう、さまざまな角度から人物像を探し、組み合わせることが有効です。

社内や身近な環境にいる人を参考にする

必ずしも管理職である必要はありません。例えば、専門職として活躍する先輩、育児と仕事を両立させながらプロジェクトを率いるリーダーなど、特定の分野で輝いている社員も立派なロールモデルです。

「あの人の時間管理術」「あの人の顧客対応スキル」といった部分的な要素を参考にするだけでも、十分に価値があります。

著名人や歴史上の人物から学ぶ

社内に限らず、社外の経営者や作家、スポーツ選手、歴史上の偉人などもロールモデルとなり得ます。彼女たちの著書やインタビュー記事から、逆境を乗り越えた経験、意思決定のプロセス、独自の価値観などを学べます。

自社の理念や求めるリーダー像に近い人物を取り上げ、社内研修の教材として活用するのも一つの方法です。

一人に絞らず複数の人物の良さを取り入れる

もっとも現実的で効果的なのが、パッチワーク型のロールモデル設定です。Aさんの戦略的思考、Bさんの部下育成力、Cさんのワークライフバランスの取り方など、複数の人物の良いところを組み合わせて、自分だけの理想のリーダー像を創り上げます。

このアプローチは、社員一人ひとりが主体的に自分のキャリアをデザインすることを促します。

参考にしたい人物の考え方や行動を言語化する

ロールモデルを見つけたら、なぜその人に惹かれるのか、具体的にどのような点を参考にしたいのかを言語化することが重要です。このプロセスを通じて、漠然とした憧れが、具体的な行動目標へと変わります。

企業は、社員がこの言語化作業を行うためのフレームワークを提供しましょう。例えば、以下のようなシートを活用して、自己分析と目標設定を促します。

分析項目問いかけ自身の状況と目標(例)
スキル・能力 その人のどのようなスキルを参考にしたいですか。〇〇さんのように、複雑な状況を整理し、わかりやすく説明する能力を身につけたい。そのために、ロジカルシンキングの研修に参加する。
リーダーシップどのようなリーダーシップスタイルに惹かれますか。△△さんのように、メンバー一人ひとりの意見を尊重し、強みを引き出すサーバント・リーダーシップを実践したい。
価値観・姿勢仕事に対するどのような考え方や姿勢を学びたいですか。□□さんのように、常に新しいことに挑戦し続ける姿勢を見習いたい。まずは社内の新規プロジェクトに手を挙げてみる。
キャリアパスその人のどのようなキャリアの歩み方を参考にしたいですか。◇◇さんのように、異動をキャリアアップの機会と捉え、専門性を広げていきたい。

ロールモデルの存在や考え方を社内に広める

見つけ出した多様なロールモデルの存在は、積極的に社内に発信してこそ価値が生まれます。一人のスター社員を祭り上げるのではなく、さまざまな立場で活躍する社員のストーリーを共有することが重要です。

具体策詳細
社内報やイントラネットでのインタビュー記事掲載成功体験だけでなく、失敗談や乗り越えた壁、プライベートとの両立の工夫などを率直に語ってもらうことで、共感を呼びます。
座談会やパネルディスカッションの開催複数のロールモデル社員に登壇してもらい、リアルな声で対話する場を設けます。若手社員からの質疑応答の時間も重要です。
ロールモデル・マップの作成「このスキルならこの人」「子育ての相談ならこの人」といったように、社内の多様なロールモデルを可視化し、誰でもアクセスできるようにします。

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女性管理職のロールモデルとして参考になる例

画一的な管理職像ではなく、多様なリーダーシップの形を示すことが、多くの女性社員の共感を得る鍵を握ります。本章では、企業の参考となるよう、いくつかのロールモデルの類型を具体的に紹介します。

ロールモデル類型特徴・強みキャリアパスの例ワークライフバランスの工夫
専門追求型リーダー  特定分野の深い知識と技術力でチームを牽引する。
部下からの技術的な信頼が厚い。
現場のエンジニア→プロジェクトリーダー→開発部長・裁量労働制を活用し、集中できる時間に業務を行う  
・チーム内での情報共有を徹底し、不在時も業務が滞らない仕組みを構築
共感型マネージャーメンバー一人ひとりの状況や感情に寄り添い、チームの心理的安全性を高める。傾聴力と対話力が高い。営業職→営業課長→人事部(人材開発担当)・短時間勤務制度を利用
・週に1度は必ず定時で退社し、家族との時間を確保
・部下との1on1ミーティングを重視
社外活動両立型NPO活動や地域貢献など、社外での活動にも積極的に参加し、そこで得た知見や人脈を本業に活かす。広報担当→CSR推進室マネージャー・副業や兼業制度を活用
・本業との相乗効果を意識し、時間配分を工夫
・多様な視点を持つことが強み

上記の例はあくまで一例です。自社の事業内容や企業文化に合わせて、多様なロールモデル像を提示することが、社員のキャリア選択の幅を広げることにつながります。

女性管理職を増やすためのロールモデルの活かし方

ロールモデルを見つけ、提示するだけでは十分ではありません。その存在を活かし、女性管理職の育成と登用を継続的に進めていくための仕組みづくりが不可欠です。

ロールモデルとなる社員を紹介する機会をつくる

前述のとおり、インタビュー記事や座談会などを定期的に開催し、ロールモデルと他の社員との接点を意図的に創出します。重要なのは、一方的な情報発信で終わらせず、双方向のコミュニケーションが生まれる場にすることです。

ランチミーティングや少人数でのワークショップなど、気軽に本音で話せる機会を設けることも効果的です。

メンター制度を整えて継続的に支援する

ロールモデルとなる社員にメンターとなってもらい、若手・中堅の女性社員(メンティー)を1対1で支援する制度です。メンターは、キャリアプランの相談に乗ったり、自身の経験を共有したりすることで、メンティーの成長をサポートします。

メンター制度を成功させるには、メンターの活動を人事評価に反映させるなど、会社としてメンターの貢献を正当に評価する仕組みが重要です。

家庭参画に前向きな男性社員の事例も発信する

女性の活躍推進は、女性だけの課題ではありません。男性社員が育児休業を取得したり、時短勤務で家庭と両立したりする事例を積極的に発信することも重要です。

「育児や介護は男女関係なく担うもの」という意識が社内に浸透することで、女性がキャリアを追求するうえでの心理的・物理的負担が軽減されます。こうした男性社員もまた、新しい時代のロールモデルと言えます。

社外で活躍する女性を招いて話を聞く場を設ける

社内だけではロールモデルが見つからない場合や、社員に新たな視点を提供したい場合には、社外から講師を招くのが有効です。異なる業界で活躍する女性リーダーや、独自のキャリアを築いた起業家などから話を聞くことで、社内の常識にとらわれない多様なキャリアの可能性に気づけます。

これは、組織全体の活性化やイノベーションの創出にもつながる良い刺激となり得ます。

女性管理職の登用を加速させるサービス

自社だけで女性活躍推進やロールモデル育成を進めるのが難しい場合、外部の専門サービスを活用するのも有効な選択肢です。客観的な視点や専門的なノウハウを取り入れることで、取り組みを加速させられます。

例えば、弊社チェンジウェーブグループが提供する「女性向け異業種研修プログラム エンパワメント・カレッジ(通称:エンカレ)」は、企業の女性リーダー候補を対象とした1Dayの異業種研修です。「自分にはまだ早い」「管理職は大変そう」といった「内なる壁」を、社外の様々なロールモデルや仲間との対話を通じて解消し、一歩踏み出すための「気づき」と「変化」を提供いたします。

完璧なスーパーウーマンを目指すのではなく、悩みながらも自分らしく活躍する複数の先輩(ロールモデル)から、自分に合う「要素(パーツ)」を学ぶことができる構成となっています。2025年度では26名の多様なロールモデルが登壇し、少人数でのラウンドテーブル形式により、リアルな実体験に基づく深い対話を実現しました。

女性活躍推進やロールモデル育成を自社だけで進めるのは難しいと感じた場合は、チェンジウェーブグループまでお気軽にご相談ください。

エンカレの説明ページへのリンク/またはバナー

まとめ:女性管理職のロールモデルを設定し社員のキャリア形成を促す

女性管理職のロールモデルの存在は、女性管理職候補の創出や育成に対して強力なエンジンとなります。

重要なのは、一人の完璧なスーパーウーマンを探すのではなく、多様な価値観や働き方を体現する、複数の身近なロールモデルを見つけ出し、その存在を組織全体で共有していくことです。パッチワーク型で複数の人物から学び、自分らしいリーダー像を創り上げていく考え方を浸透させることが、現代の多様なキャリア志向に応える鍵を握ります。

本記事で紹介した、ロールモデルの見つけ方や具体例、育成と活用のための仕組みづくりは、明日からでも始められる具体的なアクションです。これらの取り組みを通じて、女性社員一人ひとりが自身のキャリアに希望を持ち、その能力を最大限に発揮できる環境を整えることが、企業の持続的な成長を実現する道筋となります。

チェンジウェーブでは女性幹部育成対策の最新情報と実践アプローチ等をまとめた「なぜ女性経営層が増えにくいのか/3つの実践アプローチ」を無料配布しています。お気軽にお問い合わせください。

鈴木 富貴(すずき ふき)

監修者

Designing Your Life ジャパン 認定講師|静岡市男女共同参画審議会委員(2017~2019)

鈴木 富貴(すずき ふき)

所属:株式会社チェンジウェーブグループ 執行役員
経歴:静岡放送株式会社で報道記者・ディレクターとして勤務後、渡米。
ニューヨークの生活、教育をテーマにコンテンツ作成を行う。
帰国後はキャリア・ジャーナリストとして働き方改革、ダイバーシティ経営企業の取材・執筆を開始。社外メンタープログラムの企画・講師も務めた。
株式会社チェンジウェーブ参画後は、大手企業の組織変革、ダイバーシティ推進のアドバイザリー、人材開発に携わるほか、アンコンシャス・バイアスに関する講演、研修、商品開発や異業種プラットフォームの企画・講師を担当。

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